積立はずっと続けるつもりなんですけど、いつかは使う日が来ますよね。証券会社の画面に「定額」と「定率」があって、どっちで受け取るのか選べって書いてあって。……これ、どっちですか?
結論から言うと、迷ったら定率です。理由は1つだけ先に言うね。定率だと、相場が下がった月は受け取る金額も減るんだ。減るのは一見いやなんだけど、そのぶん安い日に売る量が増えない。これが効くんですよ。
先に結論
- 固定額の支払いに充てる予定がなければ、迷ったら定率。「毎月◯%ずつ」で受け取る方式です
- 定率は下がった月ほど受取額が減る。そのかわり売る口数が増えないので、同じ値動きなら資産が長持ちします
- 定額(毎月◯円)は生活費が安定するかわりに、安くなった月ほど多く売ることになります
- 楽天証券は金額指定・定率指定・期間指定の3方式。定率は細かい率まで指定できて、1回あたりの上限額も付けられます
- まだ積立中の人は、今日やることはありません。この設定は取り崩しを始めるときに決めれば間に合います
この記事でわかること
- 定額と定率で、下落した月に何が違うのか(売る口数の話)
- 1,000万円を月0.3%ずつ取り崩したら、10年後の受取額はいくらか
- 楽天証券の定期売却サービスで実際に設定できる範囲(公式の数字)
- 定額のほうが合う人の3つの条件
そもそも、選べるのは3つです
投資信託の自動取り崩しは「定期売却サービス」と呼ばれます。楽天証券の場合、方式は3つです。
| 方式 | 何を指定するか | 受取額 |
|---|---|---|
| 金額指定(定額) | 受け取る金額(1,000円以上1円単位) | 毎月おなじ |
| 定率指定(定率) | 保有口数に対する割合(0.01%以上50%以下・0.01%単位) | 毎月変わる |
| 期間指定 | 最終受取年月(最大受取期間は50年未満) | 毎月変わる |
(出典:楽天証券「定期売却サービス」・2026年9月8日確認)
※同じページの説明文には「定率指定 0.1%以上0.1%単位」という記載もありますが、詳細表「設定可能単位」では「0.01%以上50%以下、0.01%単位」です。実際に設定できる範囲は口座の画面でも確認してください。
大事なのは、定率が指定するのは「金額」ではなく「口数の割合」だということ。公式ページにも、指定した率に相当する口数を売って受け取る、受取額は変動する、と書いてあります。
期間指定も似た形です。最終受取年月を決めると、保有口数を「受取開始から最終受取月までの売却回数」で等分した口数を売っていきます。こちらも受取額は変わります。
対象になるのは投資信託の積立可能銘柄で、口座は一般・特定・NISA・旧NISA・法人が使えます(同・楽天証券「定期売却サービス」)。
金額が毎月変わるって、生活費にするなら困りませんか? 定額のほうが安心な気がします。
その感覚、正解です。安心なのは定額。ただ、その安心の裏で何が起きているかを1回だけ見てほしいんだ。ここが今日いちばん意外なところ。
下がった月に、何が違うのか
ここが分かれ目です。相場が下がった月を想像してみてください。
1,000万円で持っていた投資信託が、800万円になった月があったとします。
- 定額(毎月3万円):それでも3万円を受け取ります。値段が2割安いので、同じ3万円をつくるのに売る口数は1.25倍になります
- 定率(毎月0.3%):受け取るのは800万円の0.3%=2万4,000円。売る口数は、値下がりを理由に増えることがありません(保有口数の0.3%を売るので、むしろ毎月少しずつ減っていきます)
差は6,000円です。ランチ4回分くらいかな。
でも、その4回分は「安い日に多めに売って」つくったお金なんですよね。売ってしまった口数は、相場が戻っても戻ってきません。
気をつけたいのは「安いときに多く売る」形になること
定額は、値段が下がるほど売る口数が増えます。積立でよく言われる「安いときに多く買える」の、ちょうど逆のことが起きます。取り崩しの期間は10年、20年と続くので、この差は毎月たまっていきます。
1,000万円で試算してみる
数字にします。前提は単純にします。値動きがまったくないと仮定した場合の、受取額の推移です。
| 時期 | 定額(毎月3万円) | 定率(毎月0.3%) |
|---|---|---|
| 1か月目 | 3万円 | 3万円 |
| 1年後 | 3万円 | 約2万8,900円 |
| 10年後 | 3万円 | 約2万900円 |
| 受け取り続けられる期間 | 約27年9か月 | 計算上は終わらない |
※前提:残高1,000万円、毎月1回の取り崩し、値動きと税金は考えないものとしたときの計算です。実際は基準価額が動くので、このとおりにはなりません。 ※どちらも、実際にはその手前で自動的に止まります。楽天証券では、時価評価額が1,000円(最低売却単位)以下になった場合や、金額指定で設定金額が注文作成時の評価額の50%以上になった場合、その月以降の売却は停止されます(同・楽天証券「定期売却サービス」)。毎月3万円の定額なら、残高6万円あたりが終点です。
定率がゼロにならないのは、しくみとして当たり前なんです。残っている口数の0.3%を売るので、残高はかけ算で減っていく。半分になっても、その半分の0.3%を売るだけ。
正直、私はこの表をつくるたびに拍子抜けします。難しい理論の話ではなくて、かけ算か引き算かの違いでしかないんですよ。
もちろん、いいことばかりじゃない。定率は10年後に受取額が約7割まで減っている。「長持ちする」と「毎月たっぷり受け取れる」は、同時には成り立たないんだ。どっちを選んでも、そこは変わらない。
既定解
特別な事情がなければ「定率」。理由は3つ
- 下がった月に売る口数が増えない。上で見たとおり、定額は安い月ほど多く売る形になります。定率はここが起きないので、値動きが同じなら資産は長持ちしやすくなります
- 受取額のブレを抑える道具が用意されている。楽天証券の定率指定には「売却金額上限設定」があり、1回あたりの売却金額の上限を1円単位で決められます(値上がりして受取額が増えすぎるのを防ぐ機能です)
- あとから変えられる。新規設定・設定変更・設定解除の締切は、次回注文日の前営業日です。一生ものの決断ではありません
取り崩しを始める段階の人は、まず定率で始めて大丈夫です。設定は次回注文日の前営業日まで変えられます。
(機能と締切の出典:楽天証券「定期売却サービス」・2026年9月8日確認)
逆に、定額のほうがいい人
次の3つに当てはまる場合は、定額のほうが合います。
- 受け取ったお金で毎月の固定費を払う人。家賃や施設の費用のように、金額が動かせない支払いがあるなら、受取額が動くほうが困ります
- 取り崩す期間がはじめから短い人。数年で使い切ると決めているなら、資産を長持ちさせる利点はあまり効きません
- 受取額が減っていくのがストレスになる人。続けられない方式は、いい方式ではありません
定額を選ぶときは、金額の上限に1つルールがあります。設定時の評価額の50%以上になる設定はできません。また、設定金額が売却注文をつくる時点の評価額の50%以上になると、その月以降の売却は止まります。残高が小さくなってきたら、この線に当たると覚えておいてください(出典:同・楽天証券「定期売却サービス」)。
なお、ここで挙げた設定できる範囲や停止の条件は楽天証券のサービス仕様です。ほかの証券会社では条件が違うので、使っている会社の公式ページで確かめてください。
NISAで取り崩すときに知っておくこと
NISA口座の投資信託も、定期売却サービスの対象です(ジュニアNISA・未成年口座は指定できません。ジュニアNISAは2023年末で新規投資が終わった制度です)。
売った分の非課税枠は、その場では戻りません。金融庁の説明では、2024年からのNISA口座で売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ、翌年以降に非課税投資枠が復活します(出典:金融庁「NISAを知る」・2026年9月8日確認)。復活するのは生涯の非課税保有限度額(総枠1,800万円)の側で、その年の年間投資枠が増えるわけではありません。
2023年までのNISA(つみたてNISA・一般NISA)で持っている分は、この1,800万円の外枠で管理されると金融庁が説明しています(出典:金融庁「2023年までのNISA」・2026年9月8日確認)。旧NISAで取り崩す人は、同じ話にはならないと考えてください。
戻るのは売った値段ではなく、買ったときの値段のぶんです。ここは勘違いが多いところなので、NISAの枠は売ったら復活する?で数字を追って確認してみてください。
口座の種類で、手取りが変わります
もうひとつ大事な話を。NISA口座で売った利益は非課税です。一方、特定口座や一般口座で取り崩すと、売却益に20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税)がかかります(出典:国税庁 No.1463・No.1535・2026年9月8日確認)。上の試算は税金を考えない前提なので、課税口座で取り崩す人は、受取額から税金が引かれた分が手取りになります。
逆に、NISA口座で出た売却損は「なかったもの」とされ、特定口座の利益と損益通算できません(同・国税庁 No.1535)。この話はNISAの損は損益通算できないにまとめています。
税金の扱いや、取り崩した年の所得への影響はご自身の状況で変わります。個別の判断は税理士・所轄の税務署へ、口座区分や設定の可否は使っている証券会社へ確認してください。
もうひとつ。「取り崩したいから分配金を受取型にする」という考え方は、分配金を出さないファンドでは成り立ちません。たとえばeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の当期分配金は0円で、運用報告書に「原則として分配を抑制する方針」と書かれています(出典:交付運用報告書 第8期)。現金がほしいなら、コースの変更ではなく取り崩しで考えるほうが筋が通ります。そのあたりはオルカンの分配金は再投資型と受取型どっち?にまとめました。
まだ積立中の人が今日やること
ありません。
やらなくていいこと
- いま定期売却の設定をすること(同じ口座で積立設定中の銘柄には、定期売却を設定できません)
- 取り崩しに強いファンドへ乗り換えること(方式の話であって、商品の話ではありません)
- 何%が正解かを今日決めること。申し込みの締切は「次回注文日の前営業日」です
知っておくだけで十分です。知らないまま出口に来ると、証券会社の画面の前で手が止まります。あの止まる時間を、今日ちょっとだけ先に減らしておく、という話でした。
まとめ
まとめ:3つだけ持ち帰る
- 迷ったら定率。下がった月に売る口数が増えないので、同じ値動きなら資産が長持ちします
- そのかわり受取額は毎月変わる。固定費を払う目的なら定額のほうが合います
- 楽天証券は細かい率まで指定でき、1回あたりの上限額も付けられる。締切は次回注文日の前営業日なので、あとから変えられます
最初に、証券会社の画面で「定額」と「定率」が並んでいる話をしました。あの2つは、どっちが得かという話ではありません。下がった月に、多く売るか売らないか。違いはそこだけです。
今日はここまで。焦らずいきましょう。
本記事は制度・仕組みの情報提供を目的としたもので、特定の商品の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身でお願いします。