数字の見方から確かめたい方は、先に投資信託の実質コストの調べ方を読むと、この記事が3分で終わります。

こねこ
こねこ(投資1年目)

積立の設定画面でS&P500を検索したら、似た名前が2本出てきました。楽天・プラスとeMAXIS Slim…。同じ指数なのに、どうして2本あるんですか。安いほうを選べばいいんですよね?

結論:迷ったらこれでOK

  • すでにどちらかを積み立てているなら、そのまま続けてOK。これが既定解です
  • 公表数字どおりに計算すると、差は100万円あたり年105〜175円。月に直せば10〜15円です
  • 看板の信託報酬は楽天・プラスが安いのに、直近に実際に引かれた合計はeMAXIS Slimのほうが低い。理由は下で説明します
トリ
トリ(管理人)

この2本は「どちらが正解か」を当てる勝負じゃないよ。同じS&P500に連動して、コストの差は小数点以下2桁の世界だ。
ただ、その小数点を追いかけると看板と実際が逆になっているという、ちょっと面白いことが起きている。そこだけ見ておこう。

この記事で確定させること

  • 2本の信託報酬と、直近に実際に引かれた合計(総経費率)の実数
  • 看板と実際が逆転する理由(残高が増えると率が下がるしくみ)
  • 100万円を1年持ったときの費用の差額(ポイント還元も込み)
  • 「乗り換えない」が既定解になる理由3つと、選び分けていい人

そもそも:信託報酬と総経費率は別の数字

投資信託の費用は2階建てです。

1階が信託報酬。運用会社・販売会社・信託銀行に払う報酬で、率があらかじめ決まっています。商品ページに大きく出ている数字がこれです。

2階がその他の費用。中の株を売買した手数料、監査費用、書類の作成費などが入ります。取引してみるまで決まらないので、事前には書けません。

この1階と2階を合計して、1年ぶんの率に直したものが総経費率です。目論見書の後ろのほうに「(参考情報)ファンドの総経費率」として載っています。買う前に見られるのに、ほとんど読まれない数字でもあります。

数字で比べる:看板と、実際に引かれた合計

▼ 2本の公表数字(各社の交付目論見書より)
項目 楽天・プラス・S&P500 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
信託報酬(税込・年率) 0.077% 0.08140%(純資産1兆円未満の部分)
直近の総経費率 0.09% 0.07953%
├ 運用管理費用の比率 0.08% 0.07661%
└ その他費用の比率 0.01% 0.00292%
総経費率の対象期間 2024年7月17日〜2025年7月15日 2025年4月26日〜2026年4月27日
純資産総額 8,748億円(2026年1月30日) 11兆2,408億円(2026年4月30日)
設定日 2023年10月27日 2018年7月3日

出典は楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド 交付目論見書(2026年4月16日)eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)交付目論見書(2026年7月25日)です(いずれも2026年9月3日確認)。

看板の信託報酬は楽天・プラスが0.0044ポイント安い。ところが直近に実際に引かれた合計は、eMAXIS Slimが約0.01ポイント低くなっています。順番がひっくり返っているわけです。

なぜ逆転するのか:残高が増えると率が下がる

こねこ
こねこ

えっ、0.0814%って書いてあるのに、引かれたのは0.07661%…? 書いてある数字より少ないなんてこと、あるんですか。

トリ
トリ

ある。eMAXIS Slimの信託報酬は階段方式なんだ。純資産が1兆円を超えた部分は0.077%、3兆円を超えた部分は0.0759%…と、残高が増えるほど率が下がっていく。
このファンドの純資産は11兆円。だから全体をならすと、看板の0.0814%より低い率が実際に適用される。

目論見書には、純資産1兆円未満の部分が0.08140%、1兆円以上3兆円未満の部分が0.07700%、3兆円以上5兆円未満の部分が0.07590%(いずれも税込・年率)と書かれています。残高が大きいファンドほど、実際の負担は看板より軽くなる設計です。

一方の楽天・プラスは、その他費用が0.01%と、eMAXIS Slimの0.00292%より大きく出ています。設定が2023年10月と新しく、資金の出入りが多い時期のデータであることも効いているはずです。

この2つの総経費率は同じ物差しではありません。対象期間が楽天・プラスは2024年7月〜2025年7月、eMAXIS Slimは2025年4月〜2026年4月と、1年近くずれています。また楽天・プラス側は0.09%と四捨五入した値までしか公表されていません(eMAXIS Slimは0.07953%と細かく開示)。差の「向き」は読めますが、差の「幅」は1円単位で信じないでください。

金額に直すと、年いくら違うのか

率のままでは判断できないので、100万円を1年持った場合で計算します。

▼ 100万円を1年持ったときの費用(公表数字から計算・イメージ図)
楽天・プラス・S&P500 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
総経費率から計算した費用 約900円 約795円
楽天証券の投信残高ポイント 年0.028%=約280ポイント 対象外
差し引き 約620円 約795円

楽天証券には投信残高ポイントプログラムがあり、楽天・プラス・S&P500の進呈率は年0.028%です(出典:楽天証券 投信残高ポイントプログラム・2026年9月3日確認)。100万円の残高なら年280ポイント。eMAXIS Slimはこのプログラムの対象ファンドに入っていません。

つまり、費用だけを見ればeMAXIS Slimが年105円安く、ポイントまで入れると楽天・プラスが年175円得。どちらに転んでも、100万円あたり年200円未満の世界です。月に直せば10〜15円。自動販売機の缶コーヒー1本には届きません。

トリ
トリ

正直に言うと、この手のコスト比較は毎回ここで拍子抜けする。率で見ると「1割以上も違う!」に見えるのに、金額に直すと年150円くらいなんだ。
それでも比べる価値はあると思っている。桁の感覚を持っておくと、次に誰かが「このファンドは激安です」と言ってきたときに慌てなくなるから。

「もう積み立てているなら、そのまま」が既定解になる理由3つ

理由1:乗り換えると、NISAの枠が今年ぶん減る。 NISA口座で売って買い直すと、買い直したぶんの枠を新しく使います。売って空いた枠が使えるようになるのは翌年です。年150円のために、120万円や240万円の枠を削る取引になりかねません(NISAの枠は売ったら復活する?)。

理由2:順位は入れ替わる。 今回の逆転が示すとおり、看板の率と実際の合計は別々に動きます。運用会社は競って引き下げますし、階段方式なら残高でも変わります。「今いちばん安い1本」を追い続ける運用は、来年また乗り換える約束をするのと同じです。

理由3:中身は同じ指数。 2本ともS&P500に連動し、どちらもマザーファンドを通じて運用するファミリーファンド方式です。為替ヘッジも行いません。選び間違えて「別の相場に乗ってしまう」ことは起きない設計です。

こねこ
こねこ

…つまり、私が今積んでるほうを黙って続ければいいってことですね。ちょっと安心しました。

逆に、選び分けていい人

  • これから新規に始める人:楽天証券で買うなら、残高ポイントのぶん楽天・プラスに分があります。楽天証券以外を使うなら、その口座で買えるほうを選んでください
  • 複数の口座を1本にそろえたい人:家族や別口座と銘柄を統一したいなら、その事情を優先してOKです
  • 積立の設定を変えるだけの人:今の残高はそのままにして、これから買うぶんだけ別のファンドに切り替えるという手もあります。売らないので、NISAの枠も課税も動きません(オルカンからS&P500に変えたいで同じ考え方を整理しています)

まとめ

  • 信託報酬は楽天・プラス0.077%、eMAXIS Slim 0.08140%。看板は楽天・プラスが安い
  • 直近の総経費率は0.09%と0.07953%で逆転。eMAXIS Slimは残高11兆円で階段方式の率が効いている
  • 100万円あたりの差は年105円。楽天証券の残高ポイント(年0.028%)を入れると楽天・プラスが年175円得
  • すでに積み立てているなら乗り換えない。理由は枠・順位の入れ替わり・中身が同じの3つ
  • 数字は各社の交付目論見書で確認できます。実質コストの調べ方で自分の1本も確かめられます

コストや制度は改定されます。数字は必ず各社の最新の交付目論見書と、口座を持つ証券会社の公式ページでご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。