口座を見たら、米ドルが少しだけ残ってました。円に戻したほうがいいんでしょうか。それとも、置いておくと税金がかかったりします…?
結論、これからも米国株を買うつもりなら、ドルのまま置いておいてOK。そのうえで、ひとつ誤解を先に外しておきたい。「円に戻さなければ税金の話は起きない」——これ、正しくないんだ。国税庁の資料を読むと、分かれ目は別のところにあった。
この記事で確定させること
- ドルを円に戻すと、いくらかかるのか(楽天証券の公式手数料で金額に)
- 税金の計算が起きるのは「円に戻したとき」ではないという事実(国税庁の質疑応答事例)
- ドルのまま置く人/円に戻す人、それぞれの既定解
まだ円貨決済と外貨決済の違いから迷っている人は、先に米国株の円貨決済と外貨決済はどちら?を読んでから戻ってきてください。
そもそも、なぜドルが残るのか
積立だけをしている人の口座に、ドルが残ることはありません。ドルが出てくるのは、次の3つの場面です。
口座にドルが残る3つの場面
- ① 外貨決済で買った米国株・米国ETFを売った ── 売却代金がドルで口座に入ります
- ② 配当をドルで受け取った ── 受取通貨を米ドルにしていると、少額ずつ貯まります
- ③ ドルに替えたが、買わなかった ── 買うつもりで両替して、迷っているうちに残った形です
どれも「使い道が決まっていないドル」という点では同じです。だから同じ問いに行き着きます。戻すのか、置いておくのか。
円に戻すと、いくらかかるのか
先にお金の話を済ませます。ここは公表されている数字なので、はっきり出せます。
楽天証券の場合、株の売買で円を受け取る「円貨決済」の為替手数料は、1米ドルあたり25銭です。買うときも売るときも同じ25銭と公表されています(出典:楽天証券・手数料ページ/2026年9月4日確認)。
| 動かし方 | 手数料 | 円に直すと |
|---|---|---|
| 円 → ドル(円貨決済で買う) | 25銭 × 1,000ドル | 250円 |
| ドル → 円(円貨決済で売る) | 25銭 × 1,000ドル | 250円 |
| 円 → ドル → 円(一往復) | 50銭 × 1,000ドル | 500円 |
1,000ドルは1ドル150円なら15万円です。その15万円を行って戻すだけで、約500円が減ります。何も買っていないのに、ランチ1回ぶんが消える計算です。
ドルを直接円に替える「リアルタイム為替取引」なら、表示上の手数料は0銭です。ただし楽天証券は同じページで「提示する買レート・売レートには乖離があります」と明記しています。手数料の欄がゼロでも、買うレートと売るレートの差という形のコストは残ります。
500円…。思ったより小さいような、でも何も得していないのに減るのは嫌なような。
その感覚で合ってる。金額そのものより「次にまたドルに戻すのか」で意味が変わるんだ。もう一度ドルにするなら、往復ぶんを1回よけいに払っただけになる。逆に、二度とドルにしないなら払う価値のある500円だよ。
「円に戻さなければ税金は起きない」は誤解でした
ここからが本題です。ドルを置いておく理由として「円に戻すと税金がかかるから」と考える人がいます。私も最初はそう理解していました。国税庁の資料を読むと、そこが分かれ目ではありませんでした。
国税庁は、似ているのに答えが逆になる2つの事例を公開しています。
| 何をしたか | 為替差益を認識するか |
|---|---|
| ドル預金を払い出し、別の銀行にドルのまま預け直した | 認識しない |
| ドル預金を払い出し、その全額で外貨建MMFを買った | 認識する |
1つ目は、A銀行のドル定期1万ドルを満期で払い出し、同じ日にB銀行へドルのまま預け入れた例です。預入時が1ドル100円、払出時が1ドル110円でも、為替差益を認識する必要はないと回答されています。理由は、同じ外国通貨で預け入れと払い出しが続く限り、外貨を保有し続けているのと実質的に変わらないから、というものです(出典:国税庁「外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い」/2026年9月4日確認)。
2つ目は、ドル預金10万ドルを払い出し、その全額を外貨建MMFに投資した例です。こちらは為替差益を所得として認識する必要があると回答されています。預入時が1ドル90円、投資時が1ドル105円なら、差額15円×10万ドルで150万円が為替差益にあたる、と金額まで示されています(出典:国税庁「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い」/2026年9月4日確認)。
どちらの例も、円には一度も戻していません。それでも答えは分かれました。
分かれ目は「円に戻したか」ではなく「そのドルで何かを買ったか」
ドルをドルのまま持ち替えるだけなら、外貨を持ち続けているのと同じと扱われます。いっぽうで、そのドルで別の資産を買えば、新しい価値のあるものが手に入った時点で差額が実現した、と考えるわけです。
背景にある決まりもシンプルです。国税庁の通達では、外貨建取引とは「支払が外国通貨で行われるべきこととされている取引」を指し、円に直す計算は取引した日のレートで行う、とされています(出典:国税庁・法第57条の3《外貨建取引の換算》関係/2026年9月4日確認)。ドルで米国株を買う行為は、まさにこの外貨建取引にあたります。
だから、この判断は税金では決まらない
ここまでを並べると、答えが見えてきます。
ドルのまま置いて、あとでそのドルで米国株を買う。この場合、買った日のレートで円に直す計算が起きます。いっぽう、いま円に戻して、あとで円からドルに替えて買う。この場合も、替えた日のレートで計算されます。
つまりどちらの道を通っても、円に直すタイミングは必ず来ます。順番が違うだけです。「税金を避けるために置いておく」という理屈は成り立ちません。
じゃあ、何を基準に決めればいいんですか…?
残るのは2つだけ。手数料と、そのお金をいつ使うか。正直に言うと、私も昔このドルの置き場所を何日も考えたことがある。答えが出なかったのは難しかったからじゃなくて、税金という間違った物差しで測っていたからだったよ。
既定解
既定解:これからも米国株を買うなら、ドルのまま置いておく
理由は3つです。
- 往復ぶんの手数料を払わずに済むから ── 次に買うときにまたドルへ替えるなら、いま戻す500円(1,000ドルの場合)は純粋な往復コストです
- 置いておくこと自体は、税金の計算のきっかけにならないから ── 上の1つ目の事例のとおりです。買うときに計算が起きるのは、円に戻してから買っても同じです
- 「円高を待って戻す」は勝負になってしまうから ── 待つ判断の効き目は、当ブログの検証でも限定的でした。2026年にいちばん円高だった日を狙って全額替えても、毎月コツコツ替えた場合との差は約8,500円です(ドル転は円高を待つべき?)
逆に、円に戻したほうがいい人
作らせない選択肢も書いておきます。次のどれかに当てはまるなら、迷わず円に戻してください。
- 1年以内に使う予定があるお金。教育費や引っ越し費用を為替に預けておく理由はありません
- もう米国株は買わないと決めた人。往復コストの心配自体がなくなります
- 金額が大きく、日々の増減が気になって眠れない人。落ち着いて眠れることのほうが、500円より価値があります
- 証券口座を解約・移管する予定の人。外貨のまま移せないことがあります
配当をドルで受け取り続けるかどうかで迷っている人は、米国株の配当は円で受け取る? ドルで受け取る?もあわせてどうぞ。
申告が必要かどうかは、自分の口座で確かめてください
上で紹介したのは、国税庁が公開している一般的な考え方です。実際に申告が必要かどうかは、口座区分(特定口座か一般口座か)・金額・ほかの所得によって変わります。特定口座を使っている人は、年間取引報告書がどう作られているかを証券会社に確認するのが確実です。判断に迷う場合は、税務署か税理士に相談してください。
まとめ
残ったドルをどうするか・3点
- コスト:楽天証券の円貨決済は買いも売りも1米ドルあたり25銭。1,000ドルを一往復させると約500円
- 税金:分かれ目は「円に戻したか」ではなく「そのドルで何かを買ったか」。国税庁の2つの事例が示しています
- 既定解:これからも米国株を買うならドルのまま。1年以内に使うお金・もう買わない人は円に戻す
こねこが最初に心配していたのは「置いておくと税金がかかるのでは」でした。答えは、置いておくこと自体では起きない、です。そして円に戻したところで、いつかは同じ計算がやってきます。
決め手になるのは、手数料と、そのお金をいつ使うか。この2つだけです。
※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。税務の取り扱いについては最終的に税務署または税理士にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。