※制度の詳細は必ず金融庁 NISA特設ウェブサイトでご確認ください。

まだ「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の違いがはっきりしない方は、2つの枠の違いを先に読むと、この記事が早く終わります。

こねこ
こねこ(投資1年目)

つみたて投資枠はS&P500で埋まりました。次は成長投資枠なんですけど…同じものを積むのも芸がない気がして。高配当ETFに手を出すか、ずっと迷ってます。

結論:迷ったらこれでOK

  • 取り崩しが10年以上先なら、成長投資枠もインデックスのままでOK。これが既定解です
  • 分かれ目は利回りではなく、「そのお金を、いつ使うか」だけです
  • NISAで非課税になるのは日本の20.315%。米国の10%はNISAでも引かれ、しかも取り戻せません
トリ
トリ(管理人)

先に言っておくと「高配当は初心者向けじゃない」も「配当こそ本物の資産」も、どちらも言いすぎだと思う。利回りの比べ合いをやめて、判断の順番を変えると迷いが終わるよ。今日はその順番の話。

この記事でわかること

  • 成長投資枠でいくらまで買えるか(金融庁の記載で確認)
  • S&P500と高配当ETFの利回り・コスト・中身の差(運用会社の公式データ)
  • NISAで高配当を持つと、年いくら「取り戻せない税金」が出るか
  • 取り崩しが先なら既定解がインデックスになる理由3つ
  • 逆に、高配当を選んでいい3つの条件

そもそも:成長投資枠はいくらまで買えるのか

新しいNISAは2つの枠に分かれています。数字を先に置いておきます。

▼ 新NISAの枠(金融庁の記載より)
項目 つみたて投資枠 成長投資枠
年間に買える額 120万円 240万円
併用したときの年間合計 合計360万円 合計360万円
生涯で持てる額(簿価) 合計1,800万円 うち1,200万円まで

出典は金融庁 NISA特設ウェブサイト(2026年8月31日確認)です。成長投資枠だけで1,800万円を埋めることはできず、上限は1,200万円。この記事の計算は、この1,200万円を基準にします。

なお、成長投資枠で買える米国ETFの銘柄は、証券会社ごとに決まっています。買う前に自分の口座の対象リストを見てください。

数字で比べる:S&P500と高配当ETF

比較の相手は、同じ運用会社(ブラックロック)の2本にします。データの出どころを揃えたほうが、差が信じられるからです。

  • IVV(iShares Core S&P 500 ETF)── S&P500に連動する定番
  • HDV(iShares Core High Dividend ETF)── 米国の高配当株に投資する定番
▼ 2本の主な数字(iShares公式・2026年8月31日確認)
項目 IVV(S&P500) HDV(高配当)
分配金利回り(過去12カ月) 1.09% 3.07%
経費率 0.03% 0.08%
組入銘柄数 504 75
最大セクター 情報技術 37.94% ヘルスケア 25.18%

利回り・経費率は2026年7月31日時点、銘柄数とセクターは2026年8月27〜28日時点です。出典はIVVの公式ページHDVの公式ページ

利回りの差は約2ポイント。ここだけ見れば、高配当のほうが明らかに有利に見えます。実際、入ってくる現金は多いです。それは事実として先に認めておきます。

NISAだと、非課税が1割ぶん欠ける

ここが今日の本題です。

米国株・米国ETFの配当(分配金)は、まず米国で10%が源泉徴収されます。そのあと日本で20.315%。NISA口座が消してくれるのは、後半の20.315%だけです。米国の10%は、NISAでも引かれます。

問題はその先にあります。

特定口座なら、米国で引かれた10%は外国税額控除を確定申告することで一部取り戻せる場合があります。ところがNISA口座の配当に課された外国所得税は、外国税額控除の対象外です。日本で課税されていないため、控除する相手がいないからです。

根拠は国税庁タックスアンサー No.1240(居住者に係る外国税額控除)(2026年8月31日確認)。「控除の対象とならない外国所得税額」のなかに、非課税口座内の上場株式等の配当等にかかる外国所得税額が挙げられています。

つまり、NISAで受け取る分配金の10%は、取り返す手段が制度上ないということです。分配金が多い商品ほど、この穴は比例して大きくなります。

こねこ
こねこ

え、NISAなのに税金…? しかも取り戻せないほうに入っちゃうんですか。

トリ
トリ

そう。NISAは「日本の税金が非課税」であって「配当が丸ごと入る」ではないんだ。配当そのものの税金の流れは米国株の配当、手取りはいくら?で10万円の例を使って計算しているから、仕組みが気になったらそっちへ。

1,200万円を埋めたら、年いくら違うか

数字を生活の感覚に翻訳します。成長投資枠の上限1,200万円を、それぞれ1本で埋めたと仮定した場合です。上の利回り・経費率がそのまま続いたとして計算します。

▼ 1,200万円を1年持ったときの試算(イメージ図)
項目 IVV(S&P500) HDV(高配当)
分配金(税引前) 130,800円 368,400円
米国で引かれる10% 13,080円 36,840円
受け取れる分配金 117,720円 331,560円
経費率でかかる額 3,600円 9,600円

読み方を2つに分けます。ここを混ぜると判断を間違えます。

取り戻せない税金は、年23,760円ふえます(36,840円−13,080円)。経費率の差も足すと、年約29,700円。月に直すと約2,500円です。ランチ2回分が、毎年静かに出ていく計算になります。

一方で、受け取れる現金は年213,840円多い(331,560円−117,720円)。ここは高配当の勝ちです。

分配金は「増えた分」ではない

では、なぜ現金が21万円多く入るのに、既定解がインデックスなのか。

分配金は、会社が稼いだお金の一部を株主に配ったものです。配った分だけ、その会社の中身は軽くなります。ファンドの価格も、分配金を出した分だけ下がります。増えた分をもらっているのではなく、資産の一部を現金に替えて渡されている、という順番です。

だから今そのお金を使わないなら、こうなります。

  1. 米国で10%引かれる(取り戻せない)
  2. 残りを自分で買い直す
  3. 買い直しには、その年のNISA枠をもう一度使う

NISAの枠は「買った金額」で減ります。分配金を再投資するのも新しい買い付けなので、枠を消費します。この構造は分配金は再投資型と受取型どっち?で詳しく整理しました。

「配当が入るぶん、資産が増えるのが早い」は誤解です。使わないお金を、わざわざ税金と枠を払って現金にしていることになります。

「分散」もインデックスの一方的な勝ちではない

公平に書きます。上の表を、もう一度見てください。

HDVは75銘柄。ヘルスケア25.18%・生活必需品23.09%・エネルギー20.80%で、上位3セクターだけで約69%を占めます(2026年8月27日時点)。かなり偏っています。

ただ、IVVも504銘柄あるのに、情報技術だけで37.94%です。「インデックスだから分散は完璧」も正確ではありません。どちらも偏っていて、偏り方が違うだけ。

この事実は、どちらかを選ぶ理由にはなりません。だから判断は、中身ではなく別のところで決める必要があります。

迷いどころの既定解

迷いどころの既定解(これでOK)

  • そのお金を使うのが10年以上先なら、成長投資枠もインデックスのままでOK
  • 理由①:使わない現金を受け取るために、取り戻せない米国10%を毎年払うことになる
  • 理由②:再投資にはその年のNISA枠をもう一度使う。枠の効率が落ちる
  • 理由③:判断の材料が「利回り」しかないと、相場が荒れた日に迷う回数が増える

理由③だけ補足します。高配当を選ぶと、値動きに加えて「減配されないか」も気になり始めます。見るものが1つ増えると、下落した日に手が動きやすくなる。長期の積立では、判断の回数を減らすこと自体がリターンを守ると考えています。

逆に、高配当を選んでいい3つの条件

  1. 取り崩しが近い、またはもう始めている。定期的に現金が要るなら、売却の手間なく入ってくる分配金には実用的な価値があります
  2. 入金があるほうが続けられる。値動きだけでは心が折れるが、四半期ごとの入金があれば持ち続けられる——これは立派な理由です。続けられることが最大のリターンなので
  3. コアはもう完成している。生活防衛資金とインデックスのコア資産ができたうえで、成長投資枠の一部を配当に回す。この順番なら、偏りは許容範囲に収まります

どれにも当てはまらないなら、成長投資枠も同じインデックスで問題ありません。

トリ
トリ

私ならこう決める、という手順を置いておくね。①そのお金を使う時期を先に決める ②10年以上先ならインデックス、5年以内に使うなら現金化の手段を考える ③利回りの比較はいちばん最後。順番を逆にすると、いつまでも決まらない。もちろん、この先どちらの成績が良くなるかは誰にも分かりません。

まとめ

まとめ:成長投資枠で高配当かインデックスか

  • 成長投資枠は年240万円・生涯1,200万円まで(金融庁)
  • 利回りはIVV 1.09%/HDV 3.07%、経費率は0.03%/0.08%(iShares公式)
  • NISAで非課税になるのは日本の20.315%だけ。米国10%は引かれ、外国税額控除の対象外(国税庁No.1240)
  • 1,200万円で比べると、取り戻せない税金の差は年23,760円。受け取る現金の差は年213,840円
  • 分かれ目は利回りではなく「いつ使うお金か」。10年以上先ならインデックスのままでOK

インデックスのままでいくと決めたら、次は「どのS&P500 ETFにするか」です。VOO・IVV・SPYの選び方で3本の差を並べています。

※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。掲載した利回り・経費率は確認時点のもので、今後変動します。税制・制度は変更されることがあります。個別の税務は税務署または税理士にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。