積立を10年続けて、そろそろ「使う番」のことを考えはじめました。……で、また止まりました。売って現金にするのと、配当が入ってくるようにするの、どっちがいいんですか? 売るのって、なんだか取り返しがつかない気がして。
結論から言うと、NISAの中にある国内の上場株式等や国内籍の投資信託なら、日本の税金は取り崩しでも配当でもかからない——つまり差がつかない。だから「どっちが得か」で悩む理由が、税金の面からは出てこないんだ。差が出るのは、NISAの外=特定口座に出てからの話。ただし米国株の配当だけは、NISAの中でも米国側で引かれる分があるので、そこは後で分けて説明するね。
先に結論
- NISAの中なら、取り崩しでも配当でも日本の税金は0円。国税庁の説明では、つみたて投資枠・成長投資枠で取得した上場株式等の配当等と譲渡益はどちらも非課税です(国税庁 No.1535)
- ただし米国株・米国ETFの配当は、NISAの中でも米国側で10%が源泉徴収されます(楽天証券「外国税額控除」)。売却のほうにはこの記載がないので、米国株だけは「取り崩しでも配当でも同じ」になりません
- 特定口座では、含み益が乗っている資産なら取り崩しのほうが手取りが多くなりやすい。配当は全額に約20%、売却は「もうけた部分」だけに約20%だからです
- 税金より大きい違いもある。取り崩しは自分で金額と時期を決められる/配当は向こうが決める
- NISAで国内の上場株式・ETF・REITの配当金/分配金を非課税で受け取るには「株式数比例配分方式」の設定が要る。ここだけは今日確認してもいい
この記事ではっきりさせること
- 積立期に読んだ「配当は資産が減るからダメ」が、出口ではどう変わるのか
- 同じ年12万円の生活費を作るとき、手取りが実際にいくら違うのか
- それでも配当のほうがいい人は、どんな人か
まだ積立の途中で「成長投資枠を高配当にしようかな」で迷っている人は、先に成長投資枠は高配当かインデックスかを読んでください。この記事は、その先の「使いはじめる番」の話です。
そもそも、出口でお金を作る方法は2つしかない
積み立てた資産から生活費を作る方法は、大きく2つです。
ひとつは売る。投資信託を必要な分だけ解約して、現金にします。
もうひとつはもらう。配当を出す株やETFを持って、入ってくるお金を使います。
この2つ、まったく別の行為に見えますよね。私も最初はそう思っていました。でも、中身を見ると驚くほど似ています。
意外な話:配当も、実は取り崩しです
投資信託の分配金は、どこから出ているか。運用会社が別に用意しているお金ではなく、そのファンドの中身から出ています。
株の配当も似た形です。日本取引所グループの用語集には、配当を受け取る権利がなくなる日(配当落日)について「配当落日の株価は配当相当額分下落することとなります」とあります(出典: 日本取引所グループ 用語集「配当落」)。
要するに、配当をもらうというのは「自分の資産の一部を、自動で現金に替えてもらっている」ということ。売るか、もらうかではなく、自分で崩すか、向こうに崩してもらうかの違いなんです。
えっ。じゃあ「配当なら元本を減らさずに暮らせる」というのは……
そこは正確に言うと違うんだよね。ただ、ここが大事なんだけど——出口では、それは欠点じゃない。使うために現金を作るのが目的なんだから、資産が減るのは当たり前でしょ。積立の途中で「配当は不利」と言われるのは、特定口座なら、まだ使わないお金にその都度税金がかかるから。NISAの中でも、受け取った配当を投資に戻すならその年の投資枠を使うことになる。どちらも「まだ使わないのに現金化される」ことが理由なので、使う番になったら、その理由は当てはまらなくなるんだ。
NISAの中では、税金の差はゼロ(ただし条件があります)
まず、いちばん人数の多いケースから。
2024年から始まった現行のNISAで買った上場株式等は、配当等も、売ったときの利益も、どちらも非課税です。国税庁の説明では、18歳以上(口座開設の年の1月1日現在)の居住者等がつみたて投資枠・成長投資枠で取得した上場株式等について「その配当等やその上場株式等を売却したことにより生じた譲渡益が、非課税となります」とされています(出典: 国税庁 No.1535 NISA制度・令和8年4月1日現在法令等)。
つまり、この条件に当てはまる人にとって、「どっちが日本の税金で得か」という問いは答えが出ない。差がないからです。
正直、この結論は毎回ちょっと拍子抜けします。でも、これが分かるだけで悩む時間がまるごと消えるよね。
ただし「差はゼロ」と言えるのは、次の条件を満たす場合です(④は差の話とは別に、あわせて知っておきたい点)。ここを飛ばすと話が変わります。
「NISAなら差はゼロ」が成り立つ条件
- ①現行NISA(2024年〜)か、2023年までのNISAの非課税保有期間の中にあること。 現行NISAの非課税保有期間は無期限ですが、2023年までのNISAで投資した商品は非課税保有期間がつみたてNISA20年・一般NISA5年と決まっていて、2024年以降はNISAの外枠で管理されています(出典: 金融庁 NISA特設ウェブサイト「NISAを知る」)。期間が終わったあとの扱いは、ご利用の証券会社に確認してください
- ②配当金の受け取り方が「株式数比例配分方式」になっていること(国内の上場株式・ETF・REITの場合)。後述します
- ③米国株・米国ETFではないこと。 NISAで持っていても、米国株の配当は米国側で10%が源泉徴収されます。しかも国内で非課税とされた配当は二重課税にならないため、外国税額控除の適用を受けられません(出典: 楽天証券「外国税額控除」・2026年9月10日確認)。いっぽう米国株式の譲渡所得については、同社の商品別税制詳細に課税税率20.315%とだけ書かれていて、現地での源泉徴収の記載はありません(出典: 楽天証券「商品別税制詳細」・2026年9月10日確認)。つまり米国株は、配当には10%が引かれて、売却には引かれない。同じ現金を作るのでも、引かれ方が違うわけです。ただし同ページによると、PTPと呼ばれる一部の銘柄は売却代金の10%が米国の連邦税として差し引かれます。自分の持っている銘柄がどうなるかは、ご利用の証券会社に確認してください
- ④NISAの中で損が出ても、その損はないものとみなされること。 国税庁は、非課税口座で生じた売却損は特定口座・一般口座の配当等や譲渡益との損益通算も、繰越控除もできないとしています(国税庁 No.1535 注2)。「非課税=いつでも有利」ではありません
なお、国内籍の公募投資信託をNISAで持っている場合は、分配金も解約益もどちらも非課税なので、税金の差はやはり出ません。米国株の話は、あくまで米国株・米国ETFを直接持っているときの話です。
特定口座に出ると、はじめて差が出る
NISAの枠を使い切って、続きを特定口座で持っている人。ここからが本題です。
上場株式等の場合、税率はどちらも同じで、20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)。配当も譲渡益も同じ率です(出典: 国税庁 No.1330 配当金を受け取ったとき/国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税)。
同じ率なのに、なぜ手取りが変わるのか。税金がかかる範囲が違うからです。
- 配当:受け取った額の全部が課税対象
- 売却:売った額から取得費を引いた「もうけた部分だけ」が課税対象(出典: 上の国税庁 No.1463。譲渡益=譲渡価額−(取得費+委託手数料等))
ここで一点、誤解しやすいところがあります。「もうけた部分」の取得費は、自分で選べません。 同じ銘柄を2回以上にわたって買っている場合、売った分の取得費は「総平均法に準ずる方法」で計算した1単位当たりの金額をもとに求めます(出典: 国税庁 No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費)。積立をしてきた人は、高く買った分と安く買った分がならされた平均の値段が取得費になる、ということです。「高く買ったぶんから先に売って税金を減らす」という選び方はできません。
数字にしてみます。
年12万円(月1万円)を特定口座で作る場合
前提は「売った金額のうち、6割が元本で、4割がもうけ」という状態です(買ったときの約1.7倍に増えているイメージ)。
| 配当でもらう | 取り崩して作る | |
|---|---|---|
| 受け取る/売る金額 | 120,000円 | 120,000円 |
| 税金がかかる範囲 | 120,000円(全額) | 48,000円(もうけた4割だけ) |
| 引かれる税金(20.315%) | 24,378円 | 9,751円 |
| 手取り | 95,622円 | 110,249円 |
差は14,627円。月にならすと約1,220円です。ランチ1回分くらい、と思うかどうかは人によるけれど、毎年続く差だと考えると小さくはないよね。
ただし、ここは前提でかなり動きます。
- もうけの割合が大きいほど差は縮まる。取得費がゼロに近く「ほぼ全部がもうけ」という極端な場合なら、取り崩しも24,378円に近づき、配当とほぼ変わらなくなります
- もうけの割合が小さいほど差は広がる。もうけがほとんど乗っていない資産を崩す場合、かかる税金もその分だけ小さくなります
また、この数字は「含み益が4割・国内の上場株式等・特定口座」という前提を置いた筆者の試算です。取得費、他の口座との損益通算、配当控除や申告分離課税を選んだ場合、住民税の扱いなどによって、実際の税額は変わります。ご自身の場合にいくらになるかは、税務署または税理士に、口座の中の計算はご利用の証券会社に確認してください。
税金より大きい違いは「誰が金額を決めるか」
ここまで税金の話をしてきましたが、実際に使いはじめると、もっと大きい違いに気づきます。
取り崩しは、自分で金額と時期を決められます。 今年は旅行に行くから多めに、来年は控えめに、という調整ができる。楽天証券の定期売却サービスなら金額指定は1,000円以上・1円単位で設定できます(同社の説明では、設定できる金額は概算売却可能金額・現在の評価額の50%以下という条件つき)(出典: 楽天証券「定期売却サービス」・2026年9月10日確認)。やり方の選び方は取り崩しは定額と定率どっち?にまとめています。
配当は、向こうが金額と時期を決めます。 自分では動かせない。減配されればその年の生活費が減るし、増配されれば増える。
どちらが良い悪いではありません。決めるのが得意な人は取り崩し、決めたくない人は配当、という向き不向きの話です。
私は「自分で決められること」を価値だと思う側なので、取り崩し寄りだよ。ただ、毎回自分で売る金額を決めるのがしんどい、という感覚もすごく分かる。決める回数が増えると、相場が荒れた月に手が止まるので。だから定期売却で「決める作業」を先に済ませておく、という折衷案をよく考えています。
落とし穴:NISAの上場株式の配当は、設定しないと課税されます
配当を選ぶ人が、いちばん引っかかりやすいところです。
NISA口座で持っている国内の上場株式やETFでも、配当金の受け取り方の設定によっては非課税になりません。国税庁の説明では、非課税とされる配当等は「非課税口座を開設している金融商品取引業者等を経由して交付されるもの(株式数比例配分方式を選択したもの)に限られて」おり、発行者から直接交付されるものは課税扱いとされています(出典: 国税庁 No.1535 NISA制度 注1。2023年までのNISAおよびジュニアNISAでも同様とされています)。
配当金領収証を郵便局に持っていくやり方や、銀行口座で受け取る設定(登録配当金受領口座方式・配当金領収証方式など)のままだと、NISAなのに約20%引かれるということが起こりえます。
この設定が関係するのは、どの商品か
ここは混同されやすいので、対象をはっきりさせておきます。株式数比例配分方式は、日本証券業協会が作った用語集で「上場株式の配当金、ETF、REITの分配金を証券会社の取引口座で受取る方法のこと」と説明されています(出典: 日本証券業協会「投資の時間」金融・証券用語集・2026年9月10日確認。同事業は2024年8月に金融経済教育推進機構へ移管され、現在はそちらのサイトで公開されています)。
- 対象になる:国内の上場株式の配当金、上場しているETF・REITの分配金
- 対象ではない:上場していない一般の公募投資信託(積立でよく買われるインデックスファンドなど)の分配金。こちらは販売会社である証券会社を通じて支払われるため、そもそも「株式数比例配分方式を選ぶ」という設定項目がありません
つまり、積立で投資信託だけを持っている人は、この設定の心配はいりません。個別株・ETF・REITをNISAで持っている人が、確認すべき項目です。
迷いどころの既定解
迷いどころの既定解(これでOK)
- 資産の大半がNISAの中にあるなら、税金の面では取り崩しと配当に差がありません。「税金で得をするために配当が出る商品へ組み替える」という動機は、この場合は出てこない、ということです
- 理由①:日本の税金の差がゼロだから(国税庁 No.1535。米国株・米国ETFの配当は米国側で10%引かれるため、この限りではありません)
- 理由②:金額と時期を自分で決められるから。生活の都合に合わせられるのは取り崩しだけ
- 理由③:組み替えに費用と手間がかかるから。売って買い直せば、特定口座なら譲渡益に課税され、NISAならその年の投資枠を使う
理由③だけ補足します。「配当が出る形に変えておこう」と資産を売って買い直すと、特定口座であれば、その売却で生じた譲渡益が課税の対象になります。NISA枠の中でやる場合も、買い直しにその年の投資枠を使います。仕組みは再投資型を選べばNISA枠は減らない?で整理しました。実際に組み替えるかどうかを決める前に、ご自身の口座でいくら税金がかかるかを証券会社の試算や税理士・税務署に確認しておくと安全です。
逆に、配当のほうがいい3つの条件
- 売る作業が、自分にとって負担になる。ボタンを押すたびに迷う、家族に任せられない——これは実用的な理由です。続けられるかどうかを基準にする、という考え方もあります
- すでに配当が出る資産を持っている。今から組み替えるコストのほうが大きいなら、そのままでいい
- 入ってくるお金があるほうが、安心して使える。資産を減らす感覚が苦しくて生活費を切り詰めてしまうなら、配当のほうが気持ちよく使える、という人もいます
どれにも当てはまらないなら、今の資産のまま取り崩す形を検討してもいいと思います。最終的にどうするかは、ご自身の状況に合わせて判断してください。
今日から何かしないといけませんか?
まだ積立中なら、今日やることはありません。大丈夫。使いはじめるのが5年以上先なら、この記事は「そのときこう考える」を置いておくだけで十分だよ。ひとつだけ、国内の上場株式やETF・REITをすでにNISAで持っている人は、配当金の受け取り方の設定だけ見ておいてね。投資信託だけなら、そこは気にしなくていいよ。
まとめ
まとめ:老後の生活費は取り崩しか配当か
- 配当も分配金も、資産の中から出ていく。構造は取り崩しと同じ(資産運用業協会・日本取引所グループ)
- NISAの中なら日本の税金の差はゼロ。公式の説明では配当等も譲渡益も非課税です(国税庁 No.1535)
- ただし米国株・米国ETFの配当は、NISAでも米国側で10%引かれ、外国税額控除も使えません(楽天証券「外国税額控除」)。譲渡所得のほうは課税税率20.315%とだけ書かれていて現地源泉の記載がない(同社「商品別税制詳細」)ので、米国株だけは「どちらでも同じ」になりません
- 2023年までのNISAは非課税保有期間に期限がある(つみたてNISA20年・一般NISA5年、金融庁NISA特設サイト)。「NISAだからずっと非課税」とは限りません
- 特定口座では、配当は全額・売却はもうけた部分だけに20.315%。含み益4割の前提なら年12万円で手取りの差は約1万4,600円。取得費は総平均法に準ずる方法で計算され、自分で選べません(国税庁 No.1466)
- 本当の分かれ目は税金ではなく「金額と時期を自分で決めるか、任せるか」
- NISAで国内の上場株式・ETF・REITの配当金/分配金を非課税にするには株式数比例配分方式の設定が必要(上場していない公募投資信託の分配金は、この設定の対象外)
「売ったら終わり」ではありません。使うために積み立ててきたのだから、崩すのは失敗ではなく予定どおりです。
今日はここまで。焦らずいきましょう。
※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。税金や制度の取り扱いは個人の状況により異なります。個別の税務は税務署または税理士に、口座やNISA枠・配当金の受け取り設定はご利用の証券会社にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。