えっ、待ってください。アメリカで仕事が2万3000人「減った」ってニュースを見たのに、株は過去最高値なんですか!? 何かの間違いじゃ…?
間違いじゃないよ。今週はまさにそれが起きた週だった。しかも面白いのは、先月このブログに書いた数字のほうが、あとから書き換わったこと。順番に事実だけ整理していこう。予想はしないし、売買のおすすめもしないよ。
この記事でわかること
- 今週(8/3-7)の米国株3指数の事実と、S&P500の最高値更新
- 7月の米雇用統計は「2万3000人の減少」(予想は8万人増)だった
- 悪い数字が出たのに株が上がった仕組み
- 先月の数字が10万3000人ぶん書き換わった話(改定の実演)
- 円換算だと今週はどうだったか(先週との違い)
- 来週(8/10-14)の予定と、この週末に確認すること(1つだけ)
雇用統計そのものの見方(何時に出る・どの数字を見る)は、先に米雇用統計の見方(積立勢向け・保存版)を読んでおくと、この記事の数字が読みやすくなります。
今週の米国株(事実だけ)
今週の米国株は、主要3指数がそろって大きく上昇しました。S&P500は8月7日(金)に、8月4日(火)につけた最高値を上回って週を終えています。
8月7日(金)終値と週間の値動き
- S&P500:7,757.64(金曜 +0.6%/週間 +3.6%)
- ナスダック総合:26,690.62(金曜 +1.3%/週間 +5.2%)
- ダウ工業株30種:54,036.93(金曜 +0.3%/週間 +3.0%)
- ラッセル2000(中小型株):3,034.49(金曜 +1.1%/週間 +3.5%)
年初来ではS&P500 +13.3%、ダウ +12.4%、ナスダック +14.8%、ラッセル2000 +22.3%。米10年国債利回りは4.64%に低下しました。
先週は3指数そろって週間+1.0〜1.6%でした。今週はその3倍前後の上げ幅です。
今週の主役:7月の米雇用統計
金曜の夜(日本時間21:30)に出た7月の米雇用統計が、この週の空気を決めました。数字はこうです。
7月の米雇用統計(2026年8月7日発表)
- 非農業部門雇用者数:2万3000人の「減少」(過去12か月の月平均は+3万4000人)
- 失業率:4.1%(前月4.2%)
- 平均時給:37.62ドル・前年比+3.2%(前月比+2セント)
- 減ったのは地方自治体の教育(-5万人)と小売(-1万9000人)。医療は+2万2000人で増加が続く
- 労働参加率61.4%。1月から0.7ポイント低下
市場の事前予想は「8万人の増加」でした(出典:ザイFX! ニューヨーク外国為替市場概況・7日)。予想が8万人増で、結果が2万3000人減。10万人ぶんの落差です。
そもそも:なぜ「悪い数字」で株が上がったのか
仕事が減るって、普通に悪いニュースですよね? それで株が最高値って、市場の人たちは何を喜んでるんですか?
喜んでいるのは「雇用が減ったこと」じゃなくて、その先にある金利なんだ。株価は今の景気じゃなく、金利の見通しで動く日がある。今週はまさにその日だった。
流れはこうです。
| 順番 | 何が起きたか |
|---|---|
| 1 | 雇用者数が予想(+8万人)に反して減少(-2万3000人) |
| 2 | 「景気の熱が冷めてきた=インフレも落ち着くのでは」と市場が受け止める |
| 3 | FRBが利上げを急がなくて済みそうだ、という見方が広がる |
| 4 | 米10年国債利回りが4.64%へ低下 |
| 5 | 金利の重しが軽くなり、株(特にハイテク)が買われる |
出典:AP通信(同上)。ナスダックの上げ幅(+5.2%)がダウ(+3.0%)より大きかったのは、金利の影響を受けやすい成長株が多いためです。
ここで大事なのは、同じ数字でも逆方向に受け取られる日があるということです。保存版ページにも書いたとおり、弱い雇用は「利上げが遠のく」と読まれれば株高、「景気後退が心配」と読まれれば株安になります。今週は前者でしたが、それは事前には決められませんでした。
先月の数字が、10万3000人ぶん書き換わった
今回の発表でいちばん静かに重要だったのは、見出しの-2万3000人ではありません。過去2か月分の改定です。
今回の改定(同じ発表資料に載っています)
- 5月分:+12万9000人 → +6万3000人(6万6000人の下方修正)
- 6月分:+5万7000人 → +2万人(3万7000人の下方修正)
- 2か月合計で 10万3000人 少なく書き換えられた
このブログの雇用統計の保存版ページには、7月時点で「6月分は+5万7000人」と書いてありました。その数字が、今回+2万人に書き換わったわけです。同じページに「速報値は鉛筆書き」と書いていましたが、それが1か月で実演された形になりました(該当ページは今日の数字に更新済みです)。
じゃあ今回の「2万3000人減」も、来月には全然ちがう数字になってるかもしれないってことですか…?
その可能性はある。私はこう理解しているよ——金曜の夜に世界中が反応した数字は、まだ確定していない下書きだった。もちろん下書きが正しかったと後で分かる月もあるし、未来は誰にも分からない。それでも、確定を待てる人が方針をぶらさずに済むのは確かだと思う。
なお、BLSは8月28日に2026年の予備ベンチマーク改定(年に1度の大きな見直しの速報値)を公表する予定です(出典:同上)。数字はこの先も動きます。
数字の翻訳:円で見ると、今週はどうだったか
先週は「株は上がったのに円換算ではマイナス」という週でした。今週は逆で、為替がほとんど動きませんでした。
ドル円の8月7日ニューヨーク終値は157円76銭。雇用統計の発表直後に一時156円68銭まで急落しましたが、その後買い戻されています(出典:ザイFX! ニューヨーク外国為替市場概況・7日)。先週末(7月31日)の157円40銭と比べると、1週間で36銭の円安。ほぼ横ばいです。
今週のS&P500を「円で見る」とどうなるか(概算)
- 指数(ドル建て):7,489.72 → 7,757.64 で 約+3.6%
- 為替:157円40銭 → 157円76銭 で 約+0.2%(わずかに円安=円に直すと少し増える)
- かけ合わせると:約+3.8%
100万円分を持っている人なら、円換算でおよそ3.8万円の増加にあたります。※投資信託の基準価額は為替の反映タイミングが異なるため、実際の数字とはズレます。あくまで仕組みを確かめるための概算です。
先週(指数+1.0%・為替-3.9%=円換算-2.9%)と並べると、こうなります。
| 週 | 指数(ドル) | 為替 | 円で見ると |
|---|---|---|---|
| 7/27-31 | +1.0% | 約-3.9%(円高) | 約 -2.9% |
| 8/3-7 | +3.6% | 約+0.2%(円安) | 約 +3.8% |
2週間を通しで計算すると、S&P500は7,411.98→7,757.64で約+4.7%。一方でドル円は163円83銭→157円76銭と約3.7%の円高でした。かけ合わせると、**円建てで持っていた人の増え方は約+0.8%**にとどまります。指数のニュースだけを見ていると、この差は見えません。
同じ2週間で、片方は為替が主役、もう片方は株が主役でした。どちらが主役になるかは、その週になってみないと分かりません。だから毎月同じ金額で買い続ける設計に意味がある、という話でもあります。円高・円安の効き方そのものは円高・円安は米国株の積立にどう効く?にまとめています。
来週(8/10-14)の予定
来週の柱は1つ、米CPI(消費者物価指数)です。7月分が8月12日(水)米国時間8:30=日本時間21:30に発表されます(出典:米労働統計局(BLS)発表スケジュール)。今週の雇用統計で「インフレは落ち着くのでは」という見方が出たばかりなので、その答え合わせにあたる数字です。見方はCPI発表の見方(保存版)にまとめてあります。
これからの主な日程(定点ページで更新中)
- 米CPI(7月分):8月12日(水)21:30 → CPIの見方
- 雇用統計の予備ベンチマーク改定:8月28日(金)23:00 → 雇用統計の見方
- 米雇用統計(8月分):9月4日(金)21:30 → 雇用統計の見方
- 次回FOMC:9月15-16日(結果は日本時間9月17日未明)→ FOMCの見方
- 決算シーズン:継続中 → 決算シーズンの歩き方
日程の出典:BLS(CPI)/BLS(雇用統計・ベンチマーク改定の日程を含む)/FRB 会合カレンダー。各ページに「何を見て・何をしなくていいか」の既定解を載せています。
この週末に確認すること(1つだけ)
先週の週末は「円高で減っていて不安」でした。今週は逆に、最高値を見て増額したくなる週末です。確認することは、実は同じ場所です。
既定解:確認するのは「積立の設定が生きているか」だけ。増額を考えるなら、判断材料は相場ではなく家計にしてください
理由は3つです。
- 最高値は「高すぎる」の証拠にも「まだ上がる」の証拠にもならない:S&P500は8月4日にも最高値をつけ、その3日後にさらに更新しました。最高値の更新は、上昇相場では何度も起きる普通の出来事です。
- 今週の上昇のきっかけは、来月書き換わるかもしれない数字だった:市場が反応した-2万3000人は速報値です。実際、先月の+5万7000人は今回+2万人に修正されました。下書きの数字に合わせて自分の設定を書き換えると、修正のたびに振り回されます。
- 積立額を決めるのは、収入と支出と生活防衛資金だから:相場が良い週に増やし、悪い週に減らすと、結局「高いときに多く買う」ことになります。増やすなら、昇給やボーナスなど家計側の理由が変わったときです。
ただし、生活防衛資金(生活費の半年〜1年分)が確保できていない状態での増額は、相場が良くても見送りが基本です。
高値が怖くて手が止まる人・逆に乗り遅れが怖くなる人は、高値づかみが怖くて買えない人へもあわせてどうぞ。
この週末、やらなくていいこと
- 「雇用が減った=景気後退が近い」と結論を出す(速報値であり、8月28日と9月4日に数字が動きます)
- 最高値を理由に、来週のCPI前に積立をいったん止める(発表の方向は事前に分かりません)
- 年初来+13.3%という数字を、来年の見込みとして計算する(過去の実績であって、約束ではありません)
今週のまとめ
- S&P500は7,757.64で週間+3.6%。8月4日の最高値を8月7日にさらに更新。ナスダックは週間+5.2%
- きっかけは7月の米雇用統計。予想+8万人に対し、結果は2万3000人の減少。失業率4.1%
- 弱い雇用→利上げが遠のくとの見方→10年金利4.64%へ低下→株高、という順番だった
- 同時に5月・6月分が合計10万3000人下方修正。6月分は+5万7000人→+2万人に
- ドル円は157円76銭でほぼ横ばい。円換算のS&P500は今週おおよそ+3.8%
- 来週の柱は8月12日(水)21:30の米CPI。積立勢の既定解は「設定の確認だけ。増額の判断は家計で」
来週も、大きな動きがあれば翌朝に事実を整理してお伝えします。数字と日程は毎回、公式・一次情報を確認してから掲載しています。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。