※紹介する手数料・制度は執筆時点のものです。最新の条件は必ず各公式サイトでご確認ください。
S&P500のETFを買ってみようと調べたら、東証に上場してる「1655」みたいなのと、米国の「VOO」が出てきました。中身は同じS&P500ですよね…? なのに、どっちを選べばいいのか全然決まらなくて。
中身は同じ、で合ってるよ。だから決まらないんだよね。先に結論を言うね。楽天証券の成長投資枠でS&P500のETFを1本持つなら、東証版(円で買えるほう)でいい。
ただし、その理由は「東証版のほうが安いから」ではないんだ。保有コストだけ見ればVOOのほうが安い。それでも既定解が東証版になる理由を、金額に直して見ていこう。
まだ「そもそもETFにすべきか」で迷っている段階の方は、先にS&P500は投資信託とETF、どっちで買う?を読んでください。この記事は「ETFを買うと決めた人」向けです。
この記事でわかること
- 同じS&P500なのに、東証版と米国版で何が違うのか(公式データで確認)
- 「NISAなら二重課税が自動調整されるから東証版が得」が成り立たない理由
- コスト差を金額に直すといくらか、そして既定解と、逆の既定解
そもそも「東証版のS&P500 ETF」とは
S&P500に連動するETFは、米国の取引所だけでなく東京証券取引所にも上場しています。日本の運用会社が運用していて、円建てで、日本の株と同じように売買できます。
代表的な銘柄と信託報酬は次のとおりです。
| コード | 名称 | 運用会社 | 信託報酬 |
|---|---|---|---|
| 1655 | iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF | ブラックロック・ジャパン | 0.06%程度 |
| 2558 | MAXIS米国株式(S&P500)上場投信 | 三菱UFJアセットマネジメント | 0.06%程度 |
| 2633 | NEXT FUNDS S&P 500指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信 | 野村アセットマネジメント | 0.06% |
| 2247 | iFreeETF S&P500(為替ヘッジなし) | 大和アセットマネジメント | 0.07%以内 |
出典:日本取引所グループ・銘柄一覧(ETF)(2026年8月26日確認)
一方、米国上場のVOO(バンガード・S&P500 ETF)の経費率は**0.03%**です(Vanguard公式・VOO/2026年4月28日時点)。
つまり持っている間のコストは、VOOのほうが年0.03%ほど安い。ここは事実として、先に認めておきます。
違いは4つ。表で並べます
| 東証版(1655など) | 米国版(VOO) | |
|---|---|---|
| 買うときの通貨 | 円のまま | ドルが必要(両替が発生) |
| 信託報酬・経費率(年) | 0.06%程度 | 0.03% |
| 売買できる時間 | 平日9:00〜11:30/12:30〜15:30 | 日本時間の深夜(米国市場の時間) |
| 分配金 | 円で入る | ドルで入る |
| 1単位あたりの金額 | 1口単位(銘柄により異なる) | 1株701.83ドル=約11万円 |
出典:日本取引所グループ・売買立会時/Vanguard公式・VOO(株価は2026年8月24日時点。円換算は1ドル159円で計算)/楽天証券・手数料
米国市場が開いている時間については米国株の取引時間は日本時間で何時?に詳しくまとめています。
あれ、でも東証版って「二重課税が自動で調整されるからおトク」って読んだ気がします。それを入れたら東証版の勝ちなんじゃ…?
そこ、今日いちばん大事なところ。その制度、NISA口座では効かないんだ。調べていて私も「えっ」と声が出たよ。
意外な1点:NISA口座では二重課税の自動調整は行われない
米国株の配当には、まず米国で10%が源泉徴収されます。そのあと日本でも課税されるので、二重に取られる形になります(詳しくは米国株の配当、手取りはいくら?)。
これを解消するため、2020年1月1日以降に支払われる分配金からは、東証上場ETFなどで自動的に二重課税調整が行われるようになりました。米国で引かれた10%が、日本側の税金から自動で差し引かれる仕組みです。確定申告も要りません。
ここまでは「東証版のほうがラク」で正しい。問題はその先です。
つまりNISA口座では、東証版でも米国で引かれた10%は戻ってきません。日本側がもともと非課税なので、差し引く相手がいないためです。
米国版のVOOも、NISA口座では米国の10%はかかったまま、外国税額控除も使えません。結果として、NISA口座では二重課税まわりの有利・不利はつきません。ここで差はつかない、と割り切って先に進めます。
なお、特定口座なら話は別で、東証版は自動調整が効き、米国版は確定申告が必要になります。この一点だけは東証版が手間の面で有利です。
コスト差を金額に直す
差がつくのは、結局「両替」と「信託報酬」の2つです。100万円を例に、金額で並べます。
| 東証版(0.06%) | 米国版VOO(0.03%) | |
|---|---|---|
| 買うときの両替 | 0円(円のまま買える) | 約1,570円(1ドル25銭÷159円=約0.16%) |
| 持っている間(1年) | 約600円 | 約300円 |
| 売買手数料 | 0円(ゼロコース) | 0円(NISA成長投資枠) |
出典:楽天証券・手数料(円貨決済の為替手数料は1米ドルあたり25銭、国内株式取引手数料ゼロコースは0円。2026年8月26日確認)。円換算は1ドル159円で計算しています。為替手数料の考え方は円貨決済と外貨決済、どっちで買う?に詳しくまとめました。
読み方はこうです。米国版は買った瞬間に約1,570円のハンデを負い、そのかわり毎年300円ずつ取り返していく。追いつくのに約5年かかります。
さらに、売って円に戻すときにもう一度両替すれば、ハンデは往復で約3,100円。追いつくのに約10年という計算になります。
「経費率0.03%対0.06%」だけを見ると倍の差に見えるけど、金額にすると100万円で年300円。缶コーヒー2本分の差を、両替の1,570円が5年先送りにしている——これが実際の縮尺なんだ。
もちろん金額が大きくなれば差も比例して増える。だから既定解も、金額と期間で分かれるよ。
迷ったときの既定解
迷いどころの既定解(これでOK)
- 楽天証券の成長投資枠でS&P500のETFを1本持つなら、東証版(1655・2558・2633など)でOK。理由は3つ——(1)円のまま買えるので両替の約0.16%がまるごと消える (2)日本時間の日中に売買でき、分配金も円で入るので、深夜の注文も円転の手間もない (3)保有コストの差は100万円あたり年約300円で、両替代を取り返すのに約5年かかる
- すでに口座にドルがある人は米国版(VOO)。配当や売却代金でドルを持っているなら両替が発生しないので、経費率の安さが素直に効きます。わざわざ円に戻して東証版を買うと、両替コストを払うだけ損になります
- まとまった金額を10年以上動かさない人も米国版。両替のハンデを年0.03%が追い抜いていく期間が確保できるためです
そして、逆の既定解も書いておきます。
補足:東証版なら、つみたて投資枠で買えるのか
「東証版は日本の商品だから、つみたて投資枠で買えるのでは」と考える人もいます。答えはほぼノーです。
つみたて投資枠の対象になっているS&P500連動の東証ETFは**「上場インデックスファンド米国株式(S&P500)」(1547)の1本だけ**で、しかも取扱いは大和証券のみです(東証マネ部!・NISAつみたて投資枠対象ETF・販売会社一覧/2026年6月15日更新)。1655・2558・2633・2247はいずれも対象外です。
したがって楽天証券で買う場合、東証版も米国版も成長投資枠になります。この点でも差はつきません(金融庁・NISAを知る)。
差がつかないところが多すぎて、逆にスッキリしました…! 決められなかったのは、私がちゃんと調べたからだったんですね。
そう。本当に差がつくのは「両替が要るかどうか」の一点だけだった。だから「円しか持っていないなら東証版、ドルを持っているなら米国版」という、ずいぶん素朴な結論になるんだ。
ここまで確かめたなら、もう調べるのは終わりにしていいよ。
まとめ
まとめ:東証版と米国版、どっちで買うか
- 保有コストは米国版VOOが安い(0.03%対0.06%程度=100万円で年約300円の差)
- ただし米国版は買うときに約0.16%の両替コストがかかり、取り返すのに約5年(往復なら約10年)
- NISA口座では二重課税の自動調整は行われないため、税金面での有利・不利はつかない(特定口座なら東証版が手間の面で有利)
- 既定解は「円しか持っていないなら東証版、ドルを持っているなら米国版」
※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。