※制度の詳細は必ず金融庁 NISA特設ウェブサイトでご確認ください。
NISAでオルカンを2年積み立てたんですけど、S&P500に変えたくなってきて…。今持ってる分も、全部売って買い直したほうがいいんでしょうか。
結論:迷ったらこれでOK
- 今持っている分は売らない。これから買う分の「積立設定」だけ変える。これが既定解です
- この2つはまったく別の操作。設定を変えても、今までの分は自動では売られません
- 売って買い直すと、今年の非課税枠を「引っ越し」で使ってしまう(特定口座なら税金も確定する)
これ、本当に多い迷いどころ。しかも「変えたい」と「売りたい」がくっついて考えられているせいで、必要のない売却をしてしまう人がいる。まず、その2つを切り離すところから始めよう。
この記事でわかること
- 「積立設定の変更」と「保有分の売却」は別の操作だということ
- NISAの中で乗り換えると、非課税枠がどう減るか(金融庁の記載で確認)
- 特定口座で乗り換えたときの税金を、実際に計算するといくらか
- 逆に「売ってもいい」3つの条件
そもそも:変えるのは「これから買う分」だけ
投資信託の積立は、毎月「この商品を、この金額だけ買ってください」という予約です。積立設定を変更するというのは、来月からの予約先を書き換えるという意味しかありません。
すでに買い終わって口座にある分は、予約とは無関係です。設定を変えても、そこにそのまま残ります。
つまり「オルカンの積立をやめてS&P500を積み立てる」と決めた瞬間、あなたがやるべきことは1つだけ。積立設定の商品をS&P500に変える。それで終わりです。
売却は、やりたい人だけが追加でやる別の取引。やらなくても乗り換えは成立します。ここが分かれば、この記事の8割は終わりです。
| やること | 今持っている分 | 来月からの積立 |
|---|---|---|
| 積立設定を変えるだけ | オルカンのまま残る | S&P500になる |
| 設定変更+全部売る | 現金になる(→買い直しが必要) | S&P500になる |
NISAの中で売ると、何が起きるか
ここからが本題です。「せっかくなら全部S&P500に揃えたい」と考えて売却する場合、非課税の枠に何が起きるのか。
金融庁のよくある質問には、こう書かれています。
非課税保有限度額については、買付け残高(簿価残高)で管理されます。このため、NISA口座内の商品を売却した場合には、当該商品の簿価分の非課税枠を翌年以降に再利用できることとなります。
出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト・よくある質問(2026年8月27日確認)
大事なのは「翌年以降に」の部分です。売った瞬間に枠が空いて、その日のうちに買い直せる——という仕組みではありません。
買い直しには「今年の枠」を使うことになる
生涯の非課税枠(1,800万円)のうち売った分が戻るのは翌年。では今年、同じ金額を買い直したいときは何を使うのか。今年の年間投資枠です。
年間投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円、合わせて最大360万円(出典:金融庁 NISAを知る)。売却しても、この年間の枠は戻りません。
…それって、買い直しに枠を使ったら、新しく積み立てる分の枠がなくなるってことですか?
そう。そこが一番のポイント。年間投資枠は「今年、新しく非課税で投資できる金額」。それを引っ越しに使ってしまうと、その分だけ今年の新規入金が枠に入らなくなる。私はこれを「引っ越し代」と呼んでる。
毎月5万円を2年積み立てて、取得額120万円になっていたとします。これをつみたて投資枠で買い直すと、つみたて投資枠の今年分(年120万円)はそれで満杯。今年これから新しく入れるお金は、1円も非課税枠に入りません。
月10万円まで入れられる器を、すでに持っている商品の入れ替えに1年分まるごと使う——これが「引っ越し代」の中身です。成長投資枠を併用すれば買い直せる金額は増えますが、使った枠が今年戻らないことは変わりません。
枠の復活ルールそのものはNISAの枠は売ったら復活する?で詳しく整理しています。
特定口座で売ると、税金がその場で確定する
NISAではなく特定口座で積み立てていた場合は、話が変わります。売った時点で利益が確定し、そこに20.315%(所得税等15.315%+住民税5%)がかかります(出典:国税庁タックスアンサー No.1463・2026年8月時点)。
同じ条件で計算してみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 取得額 | 1,200,000円 |
| 売却時の評価額 | 1,400,000円 |
| 利益 | 200,000円 |
| 税金(20.315%) | 40,630円 |
| 買い直しに使える手元の額 | 1,359,370円 |
**乗り換えるだけで40,630円。**しかも減ったのは元本そのものなので、この先の複利もその分だけ小さくなります。
この金額を、乗り換えで得たいものと比べてみます。仮に「年0.1%のコストが安い商品に移りたい」という動機だったとすると、140万円に対して年0.1%は1,400円。40,630円は、その差を約29年ぶん先取りで払う計算になります。
数字にすると、たいていの乗り換えは割に合いません。含み益が出ているほど、その税金は高くつきます。
そもそも、乗り換えでどれだけ中身が変わるのか
もう1つ、計算の前に確かめておきたいことがあります。オルカンからS&P500に移ると、持っている中身はどれくらい入れ替わるのか。
答えは「思っているほど変わらない」です。全世界株式(オルカン)の中身は、約6割がすでに米国(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)公式ページの国別構成比より)。乗り換えで実際に入れ替わるのは、残りの4割の部分だけです。
重なり方の詳細はオルカンとS&P500の両方積立は無駄?にまとめています。
迷いどころの既定解
迷いどころの既定解(これでOK)
- 今の分は売らない。積立設定だけ変える。理由は3つ——(1)売っても今年の年間投資枠は戻らず、買い直しに「今年の枠」を使うことになる (2)特定口座なら利益に20.315%が確定し、元本そのものが減る (3)中身の約6割は重複しているので、入れ替わるのは4割だけ
- 結果として、口座の中にオルカンとS&P500が並ぶことになりますが、それで問題ありません。過去の分は過去の判断のまま置いておけばいい
- ただし、下の3つに当てはまる人は売却を検討する余地があります
逆に「売ってもいい」3つの条件
- 今の商品のコストが明らかに高い(信託報酬が乗り換え先の数倍あるなど)。差が大きいほど、税金を払っても回収できる年数が短くなります
- 特定口座で含み損が出ている。この場合は税金が発生せず、むしろ他の利益との損益通算に使えることがあります(NISA口座の損失は損益通算できません)
- 商品が増えすぎて自分で管理できない。シンプルさそのものに価値を感じるなら、コストを払う判断もあり得ます
どれにも当てはまらないなら、設定変更だけで十分です。
私ならこうする、という話をしておくと——過去に積んだ分には手をつけず、これから買う分だけ変える。「今のベストに全部を揃えたい」という気持ちはよく分かるけど、そろえた瞬間に確定するコストのほうが、たいていは大きいから。もちろん、この先どちらの成績が良くなるかは誰にも分かりません。
まとめ
まとめ:積立の銘柄を変えたいとき
- やることは積立設定の変更だけ。売却は別の取引で、やらなくていい
- NISAで売ると、枠が戻るのは翌年以降。買い直しには今年の年間投資枠を使う
- 特定口座なら利益に20.315%。取得120万円・評価140万円の例で40,630円
- オルカンとS&P500は中身の約6割が重複。入れ替わるのは4割だけ
- コストが数倍・含み損・管理しきれない——この3つだけが例外
積立設定を変えたあと、そもそもどちらか1本に寄せるべきか迷ったら、オルカンとS&P500の重なり方から読むのが近道です。
※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。税制・制度は変更されることがあります。個別の税務は税務署または税理士にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。