年末は「損出し」をしないと損だって、動画で見たんです。私のNISA、少しマイナスなんですけど……売ったほうがいいんでしょうか。
その「しないと損」って、どういう感じ?
みんなやってるのに、自分だけ知らずに税金を多く払ってる気がして。でも、せっかく続けてるのを売るのも怖くて。
その気持ち、わかるよ。でも安心して。NISAの中で売っても、税金は1円も変わらないんだ。損出しは、NISAとは別の口座の話なんだよ。
年末が近づくと、「損出し」という言葉をよく見かけます。 知らないと損をしそうで、なんだか落ち着かないですよね。
先に言うと、NISAで積み立てているだけなら、年末に考えることは何もありません。 NISAだけの人は、最初の章だけ読めば十分です。 特定口座も使っている人は、その先も読んでみてください。
NISAで積み立てているだけなら、損出しは意味がない
損出しは、含み損のある商品を年内に売って、損を確定させることです。 同じ年に出た利益と相殺して、税金を減らすために使われます。
ただ、これが使えるのは特定口座や一般口座の中の話です。 NISAの中で出た損は、税金の計算では「なかったこと」になります。
国税庁のタックスアンサーには、こう書かれています。
「非課税口座で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失はないものとみなされます」(国税庁 タックスアンサー No.1535「NISA制度」より・令和8年4月1日現在法令等/2026年10月18日確認)
NISAの損は、特定口座の利益とも、配当とも相殺できません。 来年以降へ繰り越すこともできません。
だから、NISAで積み立てているだけの人がやることは、ありません。 売っても税金は変わらないので、税金のために売る必要はありません。 しくみはNISAで損したらどうなる?でくわしく書いています。
じゃあ、NISAの含み損を特定口座に移してから売れば、使えるんじゃないですか?
そこ、みんな一度は考えるよね。証券会社や商品によっては移せるけど、損は一緒に移らないんだ。移した日の値段が新しい「買った値段」になるからね。
この話はNISAの含み損、特定口座に移せば損益通算できる?で、数字を使って確かめています。
損出しに意味があるのは、特定口座に今年の利益か配当がある人
では、損出しを考えたほうがいいのは誰か。 答えは、特定口座(または一般口座)に、今年の売却益か配当がある人です。
たとえば、こんな人です。
- 特定口座で買っていた米国株を、今年の春に売って利益が出た
- 同じ特定口座に、今は値下がりしている別の商品がある
この2つがそろったときに、はじめて損出しの出番が来ます。
利益と損を相殺すると、税金がいくら変わる?
2026年の売却で出た利益には、20.315%の税金がかかります。 内訳は所得税と復興特別所得税で15.315%、住民税で5%です(国税庁 タックスアンサー No.1476「特定口座制度」)。
数字で見てみます。
| 損出しをしない | 損出しをする | |
|---|---|---|
| 今年すでに確定した利益 | 10万円 | 10万円 |
| 年内に売って確定させる損 | 0円 | −10万円 |
| 今年の利益の合計 | 10万円 | 0円 |
| 今年の税金(20.315%) | 20,315円 | 0円 |
差は約2万円です。 外食10回分くらいの金額だよね。 小さくはないので、「年末は損出し」とよく言われるわけです。 売り買いの手数料を引くと、実際の差はもう少し小さくなります。
源泉徴収ありの特定口座なら、同じ口座の利益と損は自動で差し引かれます。 別の証券会社の口座の損と合わせたいときは、確定申告が必要です。 一般口座や源泉徴収なしの特定口座の人は、もともと自分で申告して計算します。
今年、何も売っていない人は?
今年まだ何も売っていなくても、特定口座で配当や分配金を受け取っている人は別です。 源泉徴収ありの特定口座で配当を受け入れていると、損とその配当が相殺され、配当の税金が戻ることがあります(国税庁 No.1476)。
売った利益も配当もないなら、損出しをしても今年の税金は変わりません。
確定申告をすれば、損を翌年から3年間繰り越すことはできます(国税庁 タックスアンサー No.1474)。 ただし、その間は売らない年も、毎年申告を続ける必要があります。 そのためにわざわざ売るかどうかは、別の話です。 申告するかどうかの考え方は、米国株で損が出た年、確定申告はする?しない?にまとめています。
「意味ない」と言われる理由は、税金が後払いになるから
ここが、「損出しは意味ない」と言われる本当の理由です。
損出しは、売ったあとに同じ商品を買い直すのがよくあるやり方です。 すると、買い直した値段が、新しい「買った値段」になります。
さっきの例で、10万円の損が出た商品を、全部売って買い直したとします。 買った値段は、その分だけ低くなります。 あとで値段が元に戻ってから売ると、今度はその10万円が利益として出てきます。
今と同じ税率なら、そのとき約2万円の税金がかかります。 つまり、今年払わなかった税金を、売る年に払う形になりやすいんです。
もう1つ、気をつけたいことがあります。 同じ日に同じ銘柄を売って買い直すと、思ったほど損が出ないことがあります。 売りの損益を計算する前に、買い直した分と平均した値段が出されるためです(大和証券 よくあるご質問・国内の現物株の例)。 買い直すなら、同じ日を避けるのが無難です。
損出しの正体(買い直した場合)
- 今年の税金は減る
- 買い直した値段が下がるので、将来売ったときの利益が増える
- 結果として、税金は消えるより「後払い」になることが多い
だからといって、まったく無意味とまでは言えません。 払うのが何年も先になれば、その間そのお金も運用に回せるからです。
ただ、「やらないと大損」というほどの話ではない。 私はそう受け止めています。
やるなら、締め切りは「年内の受渡日」
それでも損出しをするなら、日付に気をつけてください。 締め切りは、売った日(約定日)ではなく、お金と商品が受け渡される日(受渡日)です。
大和証券のよくあるご質問には、特定口座についてこう書かれています。
「約定日が年内であっても、受渡日が年をまたぐ場合には翌年の損益計算の対象となります」(大和証券 よくあるご質問「株式等は、いつまでに売却すれば年内の税金計算の対象となりますか。」より・2026年10月18日確認)
同じページでは、国内株やETFは約定日から数えて3営業日目が受渡日、と案内されています。 投資信託と外国株は、銘柄や取引のしかたで日数が違い、年末は休みが続くこともあるそうです。
正確な日付は、自分の証券会社の年末のお知らせで見る
年内に間に合う最終日は、証券会社と商品ごとに違います。 年末が近づくと、証券会社が「年内の損益を確定する最終取引日」を案内することがあります。
2026年の日付は、使っている証券会社のお知らせで見てください。 ギリギリを狙わず、余裕をもってが基本です。
私なら、積立の本体は触らない
ここは私の話です。
私は積立を始めて1年ほどのころ、下落のニュースに焦って、持っていた分を全部売ったことがあります。 損出しのためではなく、怖くなって売ったんですけどね。
売ったあと、値段が戻っていくのを見ながら、なかなか買い戻せませんでした。 買い戻すまで、1か月ほどかかっています。
正直、あのときの私に「売ってすぐ買い直す」は無理だったわ。
損出しは、多くの場合「売ってすぐ買い直す」とセットの話です。 一度売ると気持ちが揺れる人は、税金の約2万円より大きなものを逃すかもしれない。 私はそう考えて、NISAの積立はもちろん、長く持つつもりの本体には手を付けません。
私はNISAだけだから、何もしなくていいんですね。なんだか、ほっとしました。
そうだよ。知らなくて損をしていたわけじゃない。そもそも関係がなかっただけなんだ。
まとめ:損出しは「特定口座に利益や配当がある人」の年末の作業
- NISAだけで積み立てている人は、損出しをしても税金は変わらない
- 意味があるのは、特定口座などに今年の売却益か配当がある人
- 買い直すと、税金は消えるより「後払い」になることが多い
- 締め切りは年内の受渡日。日付は自分の証券会社の年末のお知らせで見る
今日やるのは1つだけです。 今年、特定口座で売った利益や受け取った配当があるかを、取引履歴で見てみる。
どちらもなければ、年末の損出しは考えなくて大丈夫です。 あった人も、損出しをするかどうかは、税金の差と、売ったあと買い直せるかを比べて決めれば大丈夫です。
「しないと損」と聞こえる話ほど、自分に関係あるかを先に見るといいよ。今日はここまで。焦らずいきましょう。
税金の扱いは、口座の種類や確定申告の有無など、人によって変わります。 自分の場合がはっきりしないときは、使っている証券会社や税務署、税理士に確かめてください。
