※制度の詳細は必ず金融庁 NISA特設ウェブサイトでご確認ください。
「NISAの損は損益通算できない」という話をまだ読んでいない方は、NISAで損したらどうなる?を先に読むと、この記事は5分で終わります。
NISAの損は損益通算できないって知りました。じゃあ、含み損のうちに特定口座へ移しておけば、あとで利益と相殺できませんか…? 口座を変えるだけなら、いけそうな気がして。
結論:迷ったらこれでOK
- そのままNISA口座で持ち続けてOK。これが既定解です
- NISAから特定口座へ移すこと自体はできます。「できない」は勘違いです
- ただし移した瞬間、取得価額が「移管日の時価」に書き換わります。それまでの含み損は、どこにも残りません
正直に書くと、私も最初は「これは使える手かも」と思って調べはじめたんだ。答えは「商品は移せる。でも損は移らない」。ここが腑に落ちるまで、制度のQ&Aを何度か読み返したよ。
この記事で確定させること
- NISAから特定口座への移管の可否と、3つの条件(公式Q&Aの記載)
- 移管したとき、取得価額がいくらになるか
- 100万円が80万円になったケースで、選択肢ごとの手取り額
- 「そのまま持つ」が既定解になる理由3つ
- 逆に、移してもいい人・売ってもいい人の条件
そもそも:損益通算とは何か
3行で確認します。
株の売買で出た損は、同じ年のほかの利益と相殺できます。100万円の利益と30万円の損があれば、税金がかかるのは差し引き70万円分だけ。これが損益通算です。相殺しきれない損は、確定申告をすれば翌年から3年間持ち越せます(国税庁 No.1474・2026年9月2日確認)。
ここで効くのは特定口座と一般口座の損だけです。NISA口座の損は、税務上ないものとして扱われます。だから通算にも繰越にも使えません(日本証券業協会 NISA Q&A A29・2026年9月2日確認)。
こねこの発想は、この一文の裏返しです。「NISAの中にあるから使えないなら、外に出せばいい」。筋は通っています。では制度は何と言っているか。
事実確認:移管はできる。ただし条件が3つある
日本証券業協会のNISA Q&A(Q67)に、そのままの問いがあります。「つみたて投資枠や成長投資枠で保有する上場株式等を特定口座や一般口座に移管することはできますか?」
答えは**「できます」**でした。
特定口座へ移すときの3条件(日本証券業協会 A67より)
- 移管先の特定口座が、NISA口座と同じ証券会社にあること
- 同じ年分・同じ銘柄は全部まとめて移すこと(一部だけは不可)
- 証券会社に「非課税口座内上場株式等の非課税口座から特定口座への移管依頼書」を出すこと
出典は日本証券業協会「NISA(少額投資非課税制度)に関するQ&A」Q67(2026年9月2日確認)です。書類を1枚出せば、手続き自体は成立します。
えっ、できるんですか! じゃあ移しちゃえば、20万円の含み損が特定口座の損になるんですね?
そこが分かれ目。同じA67に、こう書いてあるんだ。「取得日は移管日、取得価額は移管日の時価となります」。つまり買ったときの100万円は引き継がれない。移った先では「80万円で買った商品」として登録し直されるんだよ。
損は商品にくっついているのではなく、口座の記録の中にあります。移管でリセットされるのは、まさにその記録です。
数字で見る:100万円が80万円になったとき
具体例で確かめます。前提はこうです。
- NISA口座で投資信託を100万円買った
- いまの評価額は80万円(20万円の含み損)
- その後じわじわ戻して、120万円になった時点で売る
| 選ぶ道 | 税金の計算のもと | 税金 | 手取り |
|---|---|---|---|
| ①そのままNISAで持つ | 非課税 | 0円 | 120万円 |
| ②特定口座へ移してから持つ | 120万円 − 80万円=40万円 | 8万1,260円 | 111万8,740円 |
| ③いまNISA内で売って現金化 | 非課税 | 0円 | 80万円 |
②の税率は20.315%です(国税庁 No.1463・2026年9月2日確認)。40万円 × 20.315% = 8万1,260円。
①と②の差は8万1,260円。毎月5,000円の積立を16か月続けた額と、ほぼ同じです。同じ商品を同じ値段で売っただけなのに、この差が出ます。
そして肝心の20万円の含み損は、①でも②でも税務上ゼロのままです。②では移管日にリセットされ、①ではそもそもNISAの中なので存在しないことになる。どちらを選んでも、損は返ってきません。
既定解:そのままNISAで持ち続ける
迷いどころの既定解(これでOK)
- 理由1:移しても損は残らない。取得価額が移管日の時価に書き換わるため(A67)、通算に使える損は生まれません。目的が「損を活かす」なら、この手は最初から成立しません
- 理由2:移した瞬間、将来の値上がり益が課税に変わる。上の例で8万1,260円。含み損が大きいほど、戻ったときの取り分を大きく手放します
- 理由3:待つコストがゼロ。新しいNISAの非課税保有期間は無期限です(金融庁・2026年9月2日確認)。期限に追われて動く必要がありません
「含み損は放置が正解」も「損は早く確定させるべき」も、私はどちらも言いすぎだと思う。制度を読むと、そもそも選べる手が限られているだけなんだよね。だから私は淡々と積立を続けるほうを選んでいる。
逆に、移すことを検討していい人
既定解が全員に当てはまるわけではありません。次の条件に当てはまる人は、②の意味が変わります。
- これから先も下がると考え、その下落分を特定口座の損として使いたい人。移管後の下落は特定口座の損になります。ただし、これは「将来の値上がり益への課税」と引き換えです。値上がりに賭けるか、値下がりに賭けるかの選択になります
- NISA口座を廃止したい・海外転出する予定がある人。制度上の手続きが絡むので、証券会社への確認が先です
- そもそもその商品を持ち続ける気がない人。この場合の論点は口座ではなく商品です。積立の銘柄を変えたいときを読んでください
1は、はっきり言えば相場の予想です。積立を続ける人の判断材料にはなりません。
よくある勘違い3つ
勘違い2「移せば損益通算できる」──できません。取得価額が移管日の時価になるためです(同 A67)。
勘違い3「移管なら手数料も税金もかからないから、とりあえず移しておけば損はない」──移した時点では現金の出入りはありません。失うのは将来の非課税です。
まとめ
この記事の要点
- NISA口座から特定口座への移管はできる(同じ証券会社・同一銘柄は全部・依頼書の3条件)
- 移管すると取得価額は移管日の時価。それまでの含み損は消える
- NISA内の損は、売っても移しても税務上ないもの
- 100万円→80万円→120万円のケースで、移した場合の手取りは8万1,260円少ない
- 既定解はそのまま持つ。非課税保有期間は無期限で、待つコストがない
こねこが言った「口座を変えるだけなら、いけそう」は、直感としては自然です。実際、移すこと自体はできます。移らないのは損のほうでした。
含み損の画面を見ると、何か手を打ちたくなります。ただ今回に限っては、打てる手が制度上ほとんどありません。動かせるものが少ないと分かれば、見る回数を減らすほうに気持ちを使えます。
※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。税務の個別の取扱いは、所轄の税務署や税理士にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。