夏のボーナスで積立を増やしたら、10月の引き落としで「枠が足りません」と出てしまって……。今年のNISAはもう終わりですか? 残ったお金、来年の1月まで置いておいたほうがいいんでしょうか。
その「置いておいたほうがいい気がする」って、どういう感じ?
……せっかく非課税の枠があるのに、わざわざ税金のかかる口座で買うのが、もったいない気がして。損する側を自分で選んでいるみたいで。
その感覚、私も最初にありました。ただ結論から言うと、見る順番が2つあってね。まず「どちらの枠が埋まったのか」を見る。ここで止まっている人が多いんだ。そのうえで両方とも埋まっていたなら、私は特定口座でそのまま買います。理由は3つです。
迷ったらこれ:先に見るのは口座残高じゃなくて「枠の中身」
- ① 埋まったのがどちらの枠か、管理画面で見る。NISAの枠は2つあり、埋まり方は人によって違います
- ② 成長投資枠が残っているなら、そこで買える。成長投資枠は一括でも使えます
- ③ 両方とも埋まっているなら、特定口座で今までどおり買う。私ならそうします
- ④ 来年1月まで待っても、来年使える枠は360万円のまま。今年ぶんが上乗せされることはありません
- ただし「数年以内に使う予定のお金」なら、そもそも投資に回さない。ここだけは別の話です
まだ枠の全体像がつかめていない人は、先に新NISAの1,800万円は最短何年で埋まる?を読んでおくと、この先が早いです。
「使い切った」の中身は、人によって違う
「NISAの枠が埋まった」と言っても、埋まっているものは人によって違います。
新NISAの年間投資枠は2つに分かれています。つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円。併用できて、合計で年360万円です(金融庁「NISAを知る」)。
積立だけをしてきた人なら、埋まったのはつみたて投資枠のほうでしょう。逆に成長投資枠から先に使ってきた人は、残っているのはつみたて投資枠です。つみたて投資枠を使わず成長投資枠だけを使うこともできます(金融庁「よくある質問」)。どちらが埋まったかは、管理画面を開かないと分かりません。
| つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
|---|---|---|
| 年間の上限 | 120万円 | 240万円 |
| 買付方法 | 積立投資のみ | 通常の買付・積立投資 |
| 投資対象 | 積立・分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式・投資信託など(整理・監理銘柄、信託期間20年未満、高レバレッジ型、毎月分配型などは除外) |
| 生涯の上限 | 合わせて1,800万円 | うち1,200万円まで |
出典: 楽天証券「成長投資枠」NISA制度の概要(2026年9月11日確認)、金融庁「NISAを知る」
ここで2つ、見落としやすいところがあります。
1つめ。つみたて投資枠は「積立投資のみ」です。 枠が残っていても、余ったお金をポンと一括で入れることはできません。使うなら積立の設定を増額する形になります。一括で入れられるのは成長投資枠のほうです。
2つめ。生涯の上限は全体で1,800万円ですが、成長投資枠で持てるのは1,200万円まで。 つみたて投資枠だけで1,800万円を埋めることはできますが、成長投資枠だけでは1,200万円で止まります。
えっ。私、成長投資枠のほうを自分で捨てるところでした……?
大丈夫、まだ何もしていないんだから捨ててないよ。管理画面の「NISA枠の利用状況」を開けば、2つの枠の残りが別々に出ています。今日やることは、それを1回見るだけ。
なお、成長投資枠でも投資信託は買えます。「成長投資枠は個別株を買う枠」ではありません。ただし上の表のとおり除外される商品があり、そのうえで実際に何を扱うかは金融機関ごとに違います。同じファンドを成長投資枠でも買えるかどうかは、口座のある証券会社の「成長投資枠 対象商品一覧」で見てください。
枠が復活しても、年360万円は超えられない
ここからは、2つの枠が両方とも埋まった人の話です。
「じゃあ、持っている投資信託を少し売れば枠が空くのでは?」と考える人がいます。たしかにNISAは、売った商品の簿価(買ったときの値段)ぶんだけ枠が戻るしくみです。ただし戻るのは生涯の非課税保有限度額(1,800万円)のほうで、しかも翌年以降(金融庁「よくある質問」)。年間投資枠のほうは、売っても年の途中で増えることはありません。
そして、あまり知られていない一文がこれです。
見落としやすい上限
「年間投資限度額は360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)であり、復活した枠があったとしても年間360万円を超えて利用することはできません」
もうひとつ。「売却による非課税投資可能額が復活し、再利用が可能となるのは2024年以降に新NISA枠で購入した資産が対象です。旧NISA枠を売却しても、復活や再利用の対象にはなりません」
出典: 楽天証券「NISA/新NISA」NISAに関するよくあるご質問(2026年9月11日確認)
つまり、生涯の枠にどれだけ空きがあっても、1年に入れられるのは360万円が天井。売って枠を空けても、その年に買い直せる金額は増えません。売却と枠の復活のしくみはNISAの枠は売ったら復活する?で数字を追って確かめています。
だから、2つの枠を両方とも使い切っている人は、今年これ以上NISAで買うことはできません。
待つと、どうなるか
じゃあ、3か月だけ現金で持っておいて、1月1日に一気にNISAで買えばいいですよね?
それも一つの手です。ただ、来年の枠が「今年待ったぶんだけ増える」わけじゃないんです。ここを勘違いすると、待つ理由がなくなる。
現行の制度では、年間投資枠は毎年1月にまた360万円まで使えます。今年ぶんが翌年に繰り越されることはありません。今年30万円を我慢して現金で寝かせても、来年使えるのは390万円ではなく360万円です(生涯の1,800万円に空きが残っている場合の話です)。
来年すでに月10万円の積立を続ける予定なら、そこにさらに今年ぶんを足せるかは、来年の枠の空きしだい。待ったお金の置き場所は、結局また探すことになります。
そしてもう一つ。待つというのは「今より1月のほうが買うのに向いている」と決めることでもあります。積立をしている理由が「いつが良いか当てられないから」だとしたら、ここだけ当てにいくのは、ちょっと筋が通らないよね。
数字にすると、税金はいくら?
「特定口座=損」と感じるところを、金額に直してみます。
上場株式や投資信託を売って利益が出た場合、税率は20%(所得税15%・住民税5%)です。これに、所得税額の2.1%にあたる復興特別所得税が加わります(国税庁 タックスアンサー No.1463)。合計すると20.315%。この20.315%は、同じページに載っている税率どうしを掛け合わせて出した数字です。
| 出た利益 | 引かれる税金(20.315%) | 手元に残る |
|---|---|---|
| 3万円 | 約6,094円 | 約2万3,906円 |
| 10万円 | 約2万315円 | 約7万9,685円 |
| 30万円 | 約6万945円 | 約23万9,055円 |
10万円の利益で、税金は約2万円。家族で焼肉に行って、お釣りが来るくらいの額です。小さくはないよね。
その前に:自分の特定口座がどちらか見ておく
特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」があります。源泉徴収ありなら売却のつど自動で差し引かれ、原則として確定申告は不要です。源泉徴収なしなら自動では引かれず、自分で確定申告して納めます(国税庁 タックスアンサー No.1476)。どちらを選んでいるかは証券会社の口座情報で見られます。確定申告が必要かどうかはご自身の所得でも変わるので、迷うときは税務署・税理士・利用中の証券会社に聞いてください。
ただ、ここで2つ思い出してほしいことがあります。
1つめ。課税されるのは、売却・解約・償還のときと、分配金や配当を受け取ったときです。 含み益のまま持っている間は課税されません(国税庁 No.1463。譲渡価額には償還・解約で受け取る金額も含まれます)。長く持つ人ほど「税金を払う日」は先に延びます。
2つめ。いま多くのインデックスファンドは、分配金を出さずに中で再投資しています。 たとえば eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の分配金は、直近の決算(2026年4月27日)まで0円です(三菱UFJアセットマネジメント 交付運用報告書/ファンド情報ページ)。ただしこれはこれまでの実績であって、将来も0円と決まっているわけではありません。0円が続いている理由はオルカンの分配金は再投資型と受取型どっち?で追いました。
つまり、分配金を出さない投資信託を売らずに持っている間だけは、特定口座でも非課税口座でも受け取るお金は同じ(どちらも0円)です。差が出るのは、売ったときと分配金が出たとき。
米国株・米国ETFを持っている人は、ここが違います
- VOOやVTIのようなETFと個別株は配当・分配金が出ます。特定口座では、受け取るたびに課税されます(国税庁 タックスアンサー No.1330)
- しかも米国株・米国ETFの配当は、まず米国で10%引かれます。これはNISA口座でも引かれ、NISAは日本で課税されないぶん外国税額控除も使えません
- だから「保有中の手取りは同じ」が成り立つのは、分配金を出さない投資信託だけです。自分が持っているものがどちらなのか、商品ページの分配実績を見ておいてください
米国株の配当まわりの計算は、この記事のあとに出る「次のステップ」(NISAと特定口座、どっちで買う?)にまとめてあります。
私が特定口座を選ぶ理由3つ
理由は3つ
- 待っても来年の枠は増えない。360万円は毎年360万円のまま
- 分配金の出ない投信なら、持っている間の手取りは変わらない。差が出るのは売ったとき
- 「いつ買うか」を決める作業を増やしたくない。それを避けるために積立にしたので
正直に言うと、3つめが私にはいちばん大きいです。月に一度、買う日を自分で決める生活に戻ると、たぶんまた市場を見にいってしまう。手を増やさないことじたいが、私にとっては効きます。
それと、特定口座には特定口座の利点もあります。NISA口座は損が出ても、確定申告で他の損益と通算したり、翌年以降に繰り越したりができません(楽天証券)。特定口座はそれができる側です。非課税かどうかだけが口座の価値ではない、ということですね。
もちろん未来は誰にも分かりません。この3か月が下げ相場なら、待った人のほうが結果的に安く買えます。逆もあります。どちらに転ぶかを当てる話ではなく、当てなくても続く形を選ぶ、という判断です。
なお、特定口座で買ったものを、あとからNISA口座へ移すことはできません。楽天証券の説明でも「課税口座(特定口座・一般口座)で保有している株式や投資信託を、NISA口座(成長投資枠・つみたて投資枠)へ振り替えることはできません」と書かれています(楽天証券「NISA/新NISA」NISAに関するよくあるご質問・2026年9月11日確認)。移したければ一度売ることになり、そこで利益が出ていれば課税されます。
どちらが有利かは、持っている商品・保有期間・他の口座の損益・その人の所得で変わります。ここは一般論なので、自分の状況での判断は税理士・証券会社に聞いてください。
逆に、待っていい人・投資に回さないほうがいい人
逆の答えも書いておきます。次に当てはまるなら、私の答えは変わります。
こういう人は、無理に今買わなくていい
- そのお金を数年以内に使う予定がある(教育費・住宅・車・結婚など)。値下がりしたときに取り崩す羽目になります。これは口座の話ではなく、お金の置き場所の話
- 来年の360万円に、まだ十分な空きがある。来年の積立設定が年120万円だけなら、成長投資枠のほうに今年ぶんを入れる余地があります
- 特定口座をまだ開いていない。開くときは「源泉徴収あり」か「なし」かを選ぶことになります。確定申告の要否が変わるので、公式のQ&Aや証券会社の説明を見てから決めてください
1つめが、いちばん大事です。「NISAか特定口座か」で迷う前に、そのお金は投資に回していいお金なのか。ここを飛ばして口座の話をしても、答えは出ません。
今日やらなくていいこと
とりあえず、今持っている投資信託を少し売って枠を空けるのは……
それ、今年は効きません。復活するのは翌年以降だし、翌年も360万円の天井は変わらないので。今日やることは、管理画面で枠の残りを1回見るだけでいいんだよ。
- 枠を空けるために売る(今年は空きません)
- 慌てて金融機関を変える(枠の上限は金融機関では変わりません)。そもそも今年すでにNISAで買付をしていれば、今年ぶんの変更はできません。来年から変えたい場合の申込みは前年10月1日〜その年9月30日で、つみたて投資枠と成長投資枠を別々の金融機関に分けることもできません(金融庁「よくある質問」)
- 「1月に一気に買う」計画を細かく立てる(現行制度では来年の枠も360万円のままです)
まとめ
この記事ではっきりしたこと
- 年間投資枠はつみたて120万円+成長240万円=合計360万円。生涯は1,800万円で、うち成長投資枠は1,200万円まで(金融庁)
- どちらの枠が埋まったかは人によって違う。まず管理画面で2つの枠の残りを見る
- つみたて投資枠は積立投資のみ。枠が残っていても一括では入れられない(楽天証券)
- 売っても戻るのは生涯の枠で、しかも翌年以降。復活枠があっても年360万円は超えられない(楽天証券)
- 来年1月まで待っても、来年の枠は360万円のまま。今年ぶんは上乗せされない
- 課税口座の税率は20.315%(国税庁)。源泉徴収ありなら売却のつど自動で引かれる。分配金を出さない投信を売らずに持っている間は、受け取るお金がないので非課税口座との差も出ない
- ETF・個別株は別。配当が出るたびに課税され、米国株・米国ETFは米国で10%引かれる
- 数年以内に使うお金なら、口座の話より先に「投資に回さない」を選ぶ
最初のこねこの質問に戻ります。「損する側を自分で選んでいるみたい」——その気持ちは分かるんだけど、選んでいるのは損ではなくて、続けられる形のほうだと思います。まだ枠が残っているなら、なおさら。
今日はここまで。焦らずいきましょう。
※税金の扱いは、その人の所得や口座の状況で変わります。確定申告が必要かどうかを含め、具体的な判断は税務署・税理士・利用中の証券会社にご確認ください。制度・税率・商品の取扱いは2026年9月11日時点で公式サイトを確認したものです。投資の判断はご自身の責任でお願いします。