下がった日に、こわくなって全部売っちゃったんです。そのあと相場が戻ってきて……今さら買い戻すのも、なんか負けた気がして。もう2週間、画面だけ開いて何もしていません。
その2週間、いちばんしんどいところですよね。結論から言うと、戻すと決めたなら「いくらになったら」ではなく「いつ」で決める。値段を条件にすると、上がっても下がっても手が止まるからです。
迷ったらこれ
- 戻すと決めたなら、まずもとの積立の設定を再開するだけ。金額もそのままでOKです
- 手元に戻ってきたまとまったお金は、回数と日付を先に決めて分ける(例:毎月10日に3回)。「◯円まで下がったら」は条件にしない
- 近いうちに使うお金(生活費・学費・住宅費)は戻さないままでいい。売ったおかげで用意できた、と考えていい場面もあります
この記事でわかること
- 売った値段では買い戻せない、3つの理由(税金・NISAの枠・値段の決まり方)
- 130万円で売ったお金が、手元でいくらになっているかの計算
- 戻すと決めた人の決め方と、戻さないほうがいい人の条件
売った値段では、そもそも買い戻せない
先に、いちばん誤解の多いところから。「売った値段まで下がったら買い戻そう」という作戦は、そもそも成立しにくいしくみになっています。理由は3つです。
①課税口座で利益が出ていたら、税金がかかる
特定口座や一般口座で売って利益が出ていたら、その利益に税金がかかります。上場株式等の譲渡益の税率は20%(所得税15%・住民税5%)で、ここに復興特別所得税が加わり、合わせて20.315%です(国税庁 タックスアンサー No.1463・同 No.1476・2026年9月9日確認)。
100万円で買ったものが130万円になった日に売った、としましょう。
| 中身 | 金額 |
|---|---|
| 売った金額 | 1,300,000円 |
| 利益 | 300,000円 |
| 税金(20.315%) | 60,945円 |
| 手元に戻るお金 | 1,239,055円 |
同じ日に同じものを買い直しても、買えるのは1,239,055円ぶん。6万円ちょっとは税金として先に出ていきます。 ランチ1,000円なら60回分だよね。
逆に、売って損が出ていた場合。課税口座で出た損失は、確定申告をすれば同じ年の上場株式等の配当(申告分離課税を選んだもの)などと相殺でき、引ききれない分を翌年以後3年間くり越せる場合があります(国税庁 No.1474)。使えるかどうかは口座区分や状況で変わるので、ここは税務署か税理士に確認してください。
※NISA口座で売った場合はこの税金はかかりません(金融庁「NISAを知る」)。裏返しで、NISAで出た損失は課税口座の利益と相殺したり、翌年以降にくり越したりはできません(同・国税庁 No.1474)。そのかわり次の②が効いてきます。
※税率の内訳は2027年1月から変わります(復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税が加わる)。合計の20.315%は同じです(国税庁 No.1476)。
②NISAで売った枠は、その年には戻らない
NISAの非課税保有限度額(生涯で1,800万円・うち成長投資枠は1,200万円)は、買った金額(簿価)で管理されています。売ると、その商品の簿価のぶんの枠が翌年以降に復活します(金融庁「NISA よくある質問」・2026年9月9日確認)。
つまり、今年の枠をすでに使い切っている人が今日買い戻すと、その買い戻しは課税口座ですることになります。1年に投資できるのはつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円の合計360万円まで(金融庁「NISAを知る」・2026年9月9日確認)。ここが残っているかどうかで、戻し方が変わります。今年あといくら残っているかは、証券会社の口座画面で見られます。分からなければ証券会社に聞いてください。
えっ、私の枠、来年まで戻ってこないんですか……。
そう。ただ、消えたわけじゃないよ。復活するのは買ったときの値段のぶん。来年以降、その年の投資枠の範囲でまた使えます。大きく売った人は数年に分けて使うことになるね。今日あわてて全額を課税口座に入れる必要はないんだ。枠の戻り方はNISAで売った枠はいつ戻る?にまとめてあります。
③投資信託は、注文したときの値段が分からない
これは知らない人が多いところ。一般的な投資信託の値段(基準価額)は1日に1つで、しかも公表されるのは注文の締め切り後です。買う人も売る人も、当日の値段が分からない状態で注文しています。これを「ブラインド方式」といいます(資産運用業協会(旧・投資信託協会)「基準価額と分配金」・2026年9月9日確認)。
だから「◯円になったら買い戻す」と決めても、その値段で注文を出すことができません。値段は選べないんです。くわしくは投資信託は「いつの値段」で買える?にあります。
※ETF(上場投資信託)は取引所で株式と同じように売買するので、この話は当てはまりません。値段を指定した注文もできます。
正直、この3つを並べて書くたびに、私も毎回思います。売って買い直すって、思っているより不利なんだよね。
だから「日付」で決める
ここからが本題です。戻すと決めたなら、決めるのは値段ではなく日付。やることは2つだけです。
1. もとの積立設定を再開する。 金額は前と同じでいいです。積立を止めたままにしていると、「いつ再開するか」という判断が毎日発生します。判断の回数が多いほど、また同じことが起きます。
2. 手元に残ったお金は、回数と日付を先に決めて分ける。 「毎月10日に3回に分けて入れる」のように、カレンダーに書ける形にします。3回でも6回でも構いません。大事なのは、始める前に決めて、あとから動かさないこと。
分けるのって、意味あるんですか? 結局どこかで全部入れるのに。
もうけの話じゃなくて、続けられるかの話なんだ。1回で全部入れた翌週に下がると、人はまた売りたくなる。3回に分けてあると「まだ2回残ってる」と思えて、手が止まらない。分けるのは値段のためじゃなくて、自分のためです。
やらなくていいこと3つ
- 底を当てにいくこと。 下げ止まりは、過ぎたあとにしか分かりません。当てられる前提の作戦は立てない
- 毎日、値段を見にいくこと。 日付で決めたなら、その日まで見なくていい。今日確認しなくて大丈夫です
- 取り返そうとして、いつもと違う金額を入れること。 「早く戻さないと」で金額を増やすのは、売ったときの気持ちの裏返し。同じ場所に戻るだけです
私も、やりました
ここは私の失敗の話です。投資を始めて間もないころ、一度売ってしまったことがあります。そのあと買い戻したのですが、結局、売ったときより高い値段で買い直すことになりました。
そこで思ったのは、投資に必要なのは高いIQじゃなくて、安定したメンタルのほうだということ。私はもっと早く始めて、そのまま持っていればよかったと思っています。下落や暴落は当然あるものとして受け止める。これが今の私の立場です。
もっとも、これは私の受け止め方で、この先どうなるかは誰にも分かりません。だから「戻さない」という判断も、間違いではないんですよ。
戻さないほうがいい場合もあります
逆の既定解も置いておきます。次に当てはまるなら、買い戻さないままで問題ありません。
- 1年以内に使う予定があるお金(学費・引っ越し・車検・手術など)。値動きするものに戻す場所ではない
- 借金の返済に回せるお金。借入の金利が高いほど、返済に回したほうが計算は合いやすくなります(住宅ローン控除を受けている人など、返済で控除が減る場合もあります。金利と残りの期間を借入先に確認してから)
- 売ってから夜よく眠れるようになった人。金額が大きすぎたサインかもしれない。戻すなら前より小さい金額から
「全部戻すか、全部やめるか」の2択に見えてしまいますが、実際には前の半分の金額で積立を再開するという真ん中もあります。両極のどちらかに寄せなくていいんです。
まとめ
まとめ:売ってしまったあとの戻し方
- 売った値段では買い戻せない。税金(課税口座は20.315%)・NISA枠の翌年復活・ブラインド方式の3つが理由
- 戻すと決めたら「いくらになったら」ではなく日付で決める。まずは積立の再開から
- まとまったお金は回数と日付を先に決めて分ける。決めたら動かさない
- 近く使うお金・返済に回せるお金は、戻さないままでいい
売ってしまったこと自体は、もう変えられません。変えられるのは、次の1回をどう決めるかだけです。
今日はここまで。焦らずいきましょう。
※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。税金や制度の取り扱いは個人の状況により異なります。個別の税務は税務署または税理士に、口座やNISA枠の残りはご利用の証券会社にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。