※紹介する数字・制度は執筆時点のものです。最新の条件は必ず各公式サイトでご確認ください。

こねこ
こねこ(投資1年目)

成長投資枠でS&P500のETFを買ってみようと思って検索したんですけど…VOO、IVV、SPY、SPLG——同じS&P500なのに4つも出てきました。中身が同じなら、どれでもいいってことですか?

トリ
トリ(管理人)

中身が同じ、というのは合ってる。連動先はどれも同じS&P500だから、値動きはほぼそろうよ。
でも「どれでもいい」ではないんだ。持っている間のコストが、いちばん安いものといちばん高いもので約4.7倍ちがう。しかも高いほうが、いちばん有名なやつなんだよ。

この記事でわかること

  • 4本の経費率を公式データで並べるとどうなるか
  • その差は金額にするといくらか(100万円/NISA1,800万円)
  • なぜ一番有名なSPYが一番高いのか
  • 積立勢の既定解と、すでにSPYを持っている人への答え

まだ「そもそも投資信託とETFのどちらにするか」で迷っている段階の人は、先にS&P500は投資信託とETF、どっちで買う?を読んでください。この記事は「ETFで買うと決めた人が、銘柄を選ぶ場面」の話です。

そもそも「経費率」とは

ETFを持っているあいだ、運用会社に毎年支払う手数料のことです。投資信託の「信託報酬」にあたるもので、英語の目論見書では Expense Ratio と書かれます。

自分で振り込むわけではなく、ETFの価格から毎日少しずつ差し引かれます。だから明細に出てこないぶん、気づかないまま長く効き続けます。年0.03%なら、100万円を1年持って300円という規模感です。

4本を公式データで並べる

▼ S&P500連動の米国ETF・主要4本(各運用会社の公式サイトより/イメージ図)
ティッカー 運用会社 経費率(年) 1株のNAV
SPLG ステート・ストリート 0.02% 89.72ドル
VOO バンガード 0.03% 700.65ドル
IVV ブラックロック(iShares) 0.03% 769.23ドル
SPY ステート・ストリート 0.0945% 762.24ドル

出典:Vanguard公式・VOO(経費率は2026年4月28日時点、NAVは2026年8月20日時点)/iShares公式・IVV(経費率は目論見書記載、NAVは2026年8月21日時点)/State Street公式・SPY同・SPLG(いずれもGross Expense Ratio、NAVは2026年8月20日時点)

いちばん安いSPLGの0.02%と、いちばん高いSPYの0.0945%。割ると約4.7倍です。同じ指数に連動する、同じ器(ETF)の商品なのに、これだけ開きがあります。

こねこ
こねこ

えっ、SPYって一番よく名前を見るやつですよね!? それが一番高いんですか?

なぜ、いちばん有名なSPYがいちばん高いのか

SPYの設定日は1993年1月22日です。同じステート・ストリートがSPLGを設定したのは2005年11月8日(いずれもState Street公式)。12年以上の開きがあります。

もう1つ、公式サイトにはこう書かれています。SPYの持ち分は「**ユニット投資信託(unit investment trust)**である State Street SPDR S&P 500 ETF Trust の所有権を表す」——つまりSPYだけ、他の3本とは違う法的な器で運用されています。

ここで「だから古いSPYはダメ」と言いたいわけではありません。SPYは世界でもっとも売買されているETFの1つで、その厚みが必要な人(大口・短期の売買をする人)には意味があります。ただ、毎月コツコツ積み立てて何十年も持ち続ける人にとっては、売買の厚みより経費率のほうが効いてきます。同じ会社が後から、より安いSPLGを出していることが、それを物語っています。

差を金額に翻訳する

率のままでは実感が湧かないので、円に直します。

▼ 1年あたりの経費(概算・イメージ図)
残高 SPLG(0.02%) VOO・IVV(0.03%) SPY(0.0945%)
100万円 200円 300円 945円
500万円 1,000円 1,500円 4,725円
1,800万円 3,600円 5,400円 17,010円

100万円ならSPYとVOOの差は年645円。月にならせば54円です。正直、これだけなら「どっちでもいい」と言いたくなります。

でも新NISAの生涯投資枠1,800万円を全部これで埋めたとすると、差は年1万1,610円になります。しかもこれは毎年です。ここまで来ると、最初に1回選ぶだけで済む話としては、無視するには惜しい額になります。

1株の値段は、実はけっこう違う

見落とされがちですが、1株いくらで買えるかも4本で大きく違います。1ドル=158.95円(2026年8月21日のニューヨーク終値/出典:ザイFX!)で概算すると、こうなります。

  • SPLG:約1万4,300円
  • VOO:約11万1,400円
  • SPY:約12万1,200円
  • IVV:約12万2,300円

米国株・米国ETFは1株から買えますが、逆に言えば1株に満たない端数は買えません。毎月3万円を積み立てるつもりでも、VOOなら4か月ためてやっと1株。SPLGなら毎月2株ずつ買えます。

「金額を指定して積み立てているのに、その金額どおり買われていない」と感じたことがある人は、この1株単価が理由かもしれません。仕組みは米株積立は「金額指定」と「株数指定」どっち?にまとめています。

迷ったときの既定解

迷いどころの既定解(これでOK)

  • 特別な事情がなければ、VOOかIVV。どちらを選んでも構いません。理由は3つ——(1)経費率0.03%はSPY(0.0945%)の3分の1以下で、1,800万円なら年1万1,610円の差になる (2)VOOとIVVは経費率も連動先も同じで、どちらが有利という材料が現時点で見当たらない (3)本当に選ぶ意味があるのは「SPYか、それ以外か」の一度きり。そこから先の0.03%と0.02%の差は100万円あたり年100円で、悩む時間のほうが高くつきます
  • ただし、毎月の積立額が3万円以下の人はSPLG。1株が約1万4,300円なので端数が余りにくく、資金を遊ばせずに済みます。経費率0.02%はこの4本で最安でもあります
  • すでにSPYを持っている人は、乗り換えなくていい。理由は下に書きます

すでにSPYを持っている人へ

ここが、この記事でいちばん誤解されやすいところだと思います。

「SPYが高いと分かったから、売ってVOOに買い替えよう」——この判断は、節約する額より支払う額のほうが大きくなることがあります

  • NISA口座の場合:売っても、その年のうちに枠は戻りません。復活するのは翌年で、しかも戻るのは買ったときの値段(簿価)ぶんです(NISAの枠は売ったら復活する?)。100万円ぶんを入れ替えるために、翌年まで枠を寝かせることになります
  • 特定口座の場合:値上がりしていれば、売った時点で利益に約20%が課税されます。100万円が120万円になっていたら、利益20万円に対して約4万円。取り返そうとしている差は年645円です
トリ
トリ

私の考えはこう。この差は「これから買う人」がタダで受け取れるもので、「もう買った人」が取りに行くものではない
だから、今持っているSPYはそのまま置いておいて、次に買い足すぶんからVOOかIVVにする——それで十分だと思う。売り買いの手数料も税金も枠も、一切使わずに済むからね。

積立勢が、今日確認すること・しなくていいこと

  • 確認する:自分が買おうとしている(持っている)ティッカーの経費率を、運用会社の公式ページで1回だけ見る。数字は上の表のとおりですが、経費率は改定されることがあります
  • 確認する:使っている証券会社でそのティッカーを扱っているか。取扱銘柄は会社ごとに違うので、注文画面の検索窓にティッカーを入れて出てくるかで確かめるのが確実です
  • しなくていい:4本の過去リターンを比べること。同じ指数に連動しているので、差はほぼ経費率ぶんです。順位が入れ替わっても、それは選ぶ根拠になりません
  • しなくていい:持っているETFを売って乗り換えること(上のとおり)

なお「そもそもS&P500でいいのか、全米株式(VTI)にすべきか」で迷っている場合は、中身の重なりまで比べたVOO(S&P500)とVTI(全米株式)の違いが入口になります。

まとめ

まとめ:S&P500のETFはどれを選ぶか

  • 経費率はSPLG 0.02%/VOO・IVV 0.03%/SPY 0.0945%。最安と最高で約4.7倍の開きがある(各運用会社の公式サイト)
  • 金額にすると100万円で年645円(SPY対VOO)だが、NISA1,800万円なら年1万1,610円。一度選ぶだけの判断としては効く
  • 既定解はVOOかIVV。積立額が小さい人は1株約1万4,300円のSPLG
  • すでにSPYを持っているなら乗り換えない。次に買い足すぶんから変えれば、税金も枠も使わずに済む

※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。