「分配金が減った。売ったほうがいい?」と、入金額を見て手が止まった人へ。
9月に入った高配当ETFの分配金が、6月より少なかったんです。これって減配ですか?売ったほうがいいのかなって……。
その「売ったほうがいいのかな」って、どういう感じ?
このまま毎回減っていったらどうしよう、って。配当がほしくて買ったのに、選び方を間違えたのかもしれないと思うと落ち着かなくて。
分かるよ。数字が下がると、悪いことが起きた気がするよね。結論から言うと、前の回と比べて減っただけなら、まだ何も決めなくていい。比べる相手を「去年の同じ回」に変えると、見え方がけっこう変わるんだ。
そもそも、減配って何のこと?
減配は、会社が配当を前より減らすことです。大和証券の用語解説では、こう書かれています。
「前期に比べて配当を減らすこと」(大和証券 証券用語解説集「減配」より)
ここでいう主語は会社です。会社が「今期の配当はこれだけにします」と決めて、前より少なければ減配。
一方、ETFの分配金は少し事情が違います。
東証は、東証に上場するETFについて、中に持っている株の配当を受け取り、決算のときに分配するしくみだと説明しています。そして同じページに、株価指数などの値動きによって「分配金が減少する可能性があります」とも書かれています(日本取引所グループ「投資のリスク(ETF)」より)。
米国のETFも、もとになるのは中の会社から入ってきた配当です。そこから運用の費用などを引いた分が、分配金になります。だから回ごとに金額がそろわないのは、めずらしいことではありません。
VYMの分配金を5回並べてみる
実際の数字で見てみます。米国の高配当ETFでよく名前が挙がるVYMです。運用会社バンガードの公式ページに出ている、直近5回の分配金を並べました。
| 支払日 | 1口あたり |
|---|---|
| 2025年9月23日 | 0.8417ドル |
| 2025年12月23日 | 0.9474ドル |
| 2026年3月24日 | 0.8617ドル |
| 2026年6月23日 | 0.9795ドル |
| 2026年9月22日 | 0.8869ドル |
出典:Vanguard「VYM - Vanguard High Dividend Yield ETF」Distributions(分配は年4回=Quarterly と記載)
2026年9月の0.8869ドルは、6月の0.9795ドルより約9.5%少ないです。
こねこの「6月より少なかった」は、数字の上では本当なんです。
でも、同じ表をもう一度見てください。去年の9月は0.8417ドル。今年の9月の0.8869ドルは、それより約5.4%多いんです。
| 比べる相手 | 相手の金額 | 2026年9月(0.8869ドル)は |
|---|---|---|
| 前の回(2026年6月) | 0.9795ドル | 約9.5%少ない |
| 去年の同じ回(2025年9月) | 0.8417ドル | 約5.4%多い |
この5回だけで見ると、3月と9月は低め、6月と12月は高めに出ています。ただ、その前の2025年6月は0.8617ドルで低めでした。毎年同じ形になるとは限りません。
それでも、前の回とだけ比べていると、低めの回が来るたびに「減った」に見えるわけです。
減った分を、お金に直すと?
100口持っている人で計算してみます。
6月は100口で約98ドル、9月は約89ドル。差は約9ドルです。1ドル157円で円に直すと、約1,450円(税引前)。
ランチ1〜2回分くらいだよね。
※1ドル157円は、FRB(米連邦準備制度理事会)が公表している2026年10月2日の円ドルレート157.81円をもとに、計算しやすく157円としたものです(セントルイス連銀 FRED「DEXJPUS」)。実際に受け取る額は、米国と日本の税金や、受け取った日の為替で変わります。米国株の配当は現地で10%が差し引かれ、NISA口座でもこの分は取り戻せません(楽天証券「外国税額控除」より。くわしくはNISAでも米国の10%は引かれる?)。実際の受取額は、証券会社の取引履歴などで確かめられます。
この1,450円の差で、何年も持つつもりだったものを手放すかどうか決めるのは、ちょっと早いと私は思います。
「前の回」より「去年の同じ回」を見る
ここは、私自身が失敗から学んだところです。
私は投資を始めて1年ほどのころ、下がった日に積立を全部売ってしまったことがあります。そのころは、ネットや動画で「暴落」「戻らない」という強い言葉を毎日のように浴びていました。数字が動くたびに、気持ちも揺れていたんです。
そのあと変えたことの1つが、数字を何と比べるかです。今はCPI(物価の指標)のような数字が出ても、見るのは「前の年と比べてどうか」です。「どれだけ動いたか」は追いません。見る場所を絞れたのは、私にとって大きかったです。
分配金も同じだと思っています。
- 前の回と比べる → 低めの回が来るたびに「減った」に見える
- 去年の同じ回と比べる → 回ごとの上下に振り回されにくい
もちろん、去年の同じ回より少ないこともあります。そのときも、私なら1回だけでは決めません。2回、3回と続いているかを見ます。
個別株の「減配」は、話が少し違う
ETFではなく、個別の会社の株で「減配」のニュースが出たときは、少し事情が違います。
最初に書いたとおり、減配は会社が決めることです。だから確かめる場所は、ニュースの見出しではなく会社の発表そのものになります。なぜ減らすのか、理由は会社の資料に書いてあります。
そのうえで、私が自分に聞くのは1つだけです。
「私は、なぜこの株を持っていたんだっけ?」
配当の額だけが理由だったのか。会社の事業を応援したかったのか。持っている理由によって、同じ減配でも受け止め方は変わります。ここは人によって答えが違うところなので、私から「売る・持つ」は言えません。
「減配したら即売る」と決めておく前に
ETFの分配金は、上の表のように回ごとに上下します。「前の回より減ったら売る」と決めたとします。このVYMの5回なら、3月と9月の低めの回のたびに、そのルールに当たってしまいます。
私ならこうする
私の考えを書いておきます。あくまで私の考えです。
私なら、分配金が1回減ったことでは売り買いをしません。見るとしても、去年の同じ回と比べるところまでです。
それと、配当だけを目当てに1つのものに寄せないようにしています。暴落もあるので、いろいろな領域や会社に分けて持つのが私の基本です。高配当だけを狙うのは、本当の分散ではないと考えています。
ちなみに、オルカンを積み立てているだけの人は、この話はあまり当てはまりません。オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)の分配金は、2024年・2025年・2026年の決算でいずれも0円です(三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」分配金実績/2026年10月9日確認)。方針は商品ごとに違うので、目論見書の「収益分配方針」で確かめられます(しくみは配当金はなぜ出る?にまとめています)。
迷ったらこれ
私なら、前の回より減っただけでは何も決めません。去年の同じ回と比べて、続けて減っているかだけ見ます。理由は3つです。
- ETFの分配金は、中の会社から入った配当で決まり、回ごとに上下する(東証「投資のリスク(ETF)」)
- VYMの2026年9月は、6月より約9.5%少ない一方、去年の9月より約5.4%多い(バンガード公式)
- 減った額は100口で約9ドル=約1,450円(税引前)。この1回の差だけで売り買いを決めるのは早い、と私は考えます
高配当ETFの3本の違いが気になった人は、高配当ETFはVYM・HDV・SPYDどれ?も見てみてください。分配金をドルで受け取るか円で受け取るかで迷っている人は、米国株の配当は円で受け取る?ドルで受け取る?にまとめています。
まとめ
まとめ:分配金が前より減った、これって減配?
- 減配は「前期に比べて配当を減らすこと」。主語は会社(大和証券 用語解説)
- ETFの分配金は、中の会社から入った配当を分けるもの。回ごとに上下する(東証)
- VYMの2026年9月は、6月比で約9.5%少なく、前年9月比で約5.4%多い(バンガード公式)
- 比べるのは去年の同じ回。1回で決めず、続いているかを見る
- 個別株の減配は、会社の発表で理由を見て、「なぜ持っていたか」に戻る
最初のこねこの「選び方を間違えたのかも」に戻ります。
前の回と比べて減った9月は、去年の9月と比べると増えていました。間違えたのは選び方ではなく、比べる相手のほうだったのかもしれません。
分配金が減ったと感じた日は、去年の同じ回を見るところから。今日はここまで。焦らずいきましょう。
※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。分配金の数字は2026年10月9日にバンガードの公式ページで確認した過去の実績で、将来の分配金を示すものではありません。円の金額は1ドル157円で固定した説明用の計算例で、税金は差し引いていません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。