S&P500の積立、はじめて大きなマイナスになりました…。数字が赤いのを見ると胃が痛くて、「いったん売って様子を見たほうがいいのかな」「積立だけでも止めるべきかな」って一日中考えてしまいます。何かしたほうがいいですよね?
その気持ちはよく分かる。先に結論を言うね。特別な事情がなければ、売らない・止めない。つまり「何もしない」でOKだよ。ただ「何もしないでいい」と言われても納得できないと思うから、やってしまいがちな行動が、なぜ効かないのかを1つずつ見ていこう。分かったうえで何もしないのは、我慢とは違うからね。
この記事を読み終えると、次のことがわかるようになります。
この記事でわかること
- 「下がった日」に本当に起きていること(値段より先に変わるもの)
- 評価額が減った理由は株価だけではない、という確認
- 下落の日にやってしまいがちな3つの行動と、その落とし穴
- 暴落・急落の日の既定解(理由3つと、当てはまらない人の例外)
- それでも不安な日に、やっていいこと
積立の設定そのものをまだ確認したことがない方は、先に楽天証券で米国株を買う方法(はじめての方へ)を読むと、この記事の前提がつかみやすくなります。
下がった日に変わるのは、値段より先に「判断の回数」
下落の日にいちばん困るのは、含み損の金額そのものではありません。困るのは、それまで決めなくてよかったことを、急に決めさせられることです。
いつもの月なら、積立は自動で買われて、こちらは何も決めていません。ところが数字が赤くなった日だけ、「売るか・持つか」「止めるか・続けるか」という選択が目の前に現れます。しかも決める材料は増えていないのに、締め切りだけが「今日」に見える。だから苦しくなります。
たしかに…。上がってる月は何も考えてませんでした。下がった日だけ急に「決めなきゃ」って気持ちになります。
そこがポイント。相場が動いたから判断が必要になった、わけじゃないんだ。判断が必要になったように「見えている」だけ。実際にやることが変わったかどうかは、値段ではなく「そのお金をいつ使うか」で決まるからね。
まず確認:減った理由は株価だけ?
行動を考える前に、ひとつ確認しておきたいことがあります。円で見た評価額の減り方には、株価と為替の2つが混ざっているという点です。
米国株や米国株の投資信託は、ドルで動く資産を円に換算して表示しています。そのため「米国の株価は下がっていないのに、円高で評価額だけ減って見える」ことも、逆に「株価が下がったのに円安で評価額はあまり減っていない」ことも起こります。仕組みは円高・円安は米国株の積立にどう効く?で整理しています。
下落の日にやってしまいがちな3つの行動
ここからが本題です。下がった日に多くの人が考えるのは、だいたい次の3つに分かれます。どれも「まっとうな不安」から出てくる行動ですが、それぞれ落とし穴があります。
①怖くなって売る
いちばん多いのがこれです。ただ、売るという判断は「下げを避ける」だけでは終わらず、「いつ買い戻すか」まで自分に課すことになります。売った瞬間に、次は「戻すタイミング」という新しい問題が発生する。下げている最中はもっと怖くて買えず、上がり始めると「もう遅い気がする」と感じる——この二重の判断を当て続けるのは、かなり無理があります。
さらに、NISA口座で保有しているものを売る場合は、制度上のコストも乗ります。2024年からのNISAでは売却分の枠が再利用できるようになりましたが、金融庁の説明では復活するのは「翌年以降」で、金額は簿価(取得金額)の分です(参照:金融庁「NISAを知る」)。つまり、不安で売ったその年のうちに同じ枠で買い直すことはできません。
加えてNISA口座では、損失を他の利益と相殺する損益通算や繰越控除ができません。この点はNISA成長投資枠と特定口座、どっちで買う?で整理しています。非課税のメリットは利益が出たときのもので、下がった局面で売ると税制上の救済もない——これが、下落時の売却がとくに惜しくなる理由です。
②積立だけ止めて様子を見る
「全部売るのは怖いけど、積立は止めて落ち着くのを待とう」。一見、賢い折衷案に見えます。でもこれは、①と同じ問題を抱えています。止めるのは今日決められても、再開の日は自分で当てなければならないからです。
そして積立の役割から考えると、止めるタイミングはむしろ逆を向いています。積立は毎回同じ金額を出すので、値段が下がった月は自動的に多くの口数を買います。金融庁も積立投資について「積立投資することで安いときに買わなかったり、高いときにだけ買ってしまうことを避けられます」と説明しています(参照:金融庁「資産形成の基本」)。下がった月に止めるのは、この仕組みの一番効いている部分を自分で外す行動です。
③取り返そうとして、いつもと違うことをする
「下げた分を早く戻したい」と考えて、レバレッジ型の商品に乗り換えたり、生活資金に手をつけて一気に買い増したりする——これは①②とは逆方向ですが、根っこは同じです。いつものルールの外に出て、判断の回数を増やしているという点で共通しています。
下がった日は、判断の精度が上がる日ではありません。むしろ焦りが乗っている日です。その日に普段はやらないことを始めるのは、条件のいい日に決めるのとは違います。
| 今日決めること | このあと自分に残る宿題 | |
|---|---|---|
| 売る | 売る値段 | 買い戻す時期を当てる(+NISAは枠が翌年まで戻らない) |
| 積立を止める | 止める日 | 再開する時期を当てる |
| そのまま続ける | なし(すでに決めてある) | なし |
※上の表は行動ごとに残る判断の数を並べたイメージ図で、運用成績を示すものではありません。
売っても止めても、「次いつ戻すか」が宿題として残るんですね…。それ、いまの私に絶対解けないです。
そう、そこが肝心なところ。「何もしない」は、不安を我慢することじゃなくて、解けない宿題を自分に出さないという選択なんだ。逆向きの怖さ——つまり「高すぎて買えない」と感じるときの考え方は高値づかみが怖いときの記事にまとめてあるけど、結論の形は同じだよ。
迷いどころの既定解(これでOK)
暴落・急落で含み損になっても、売らず、積立も止めず、そのまま続けてOKです。理由は3つ。
- 売る・止めるは「戻す時期」という新しい宿題を増やす。下げを避けられても、買い戻しや再開のタイミングを当て続ける必要が出てきます
- 下がった月ほど、積立の効き目が大きい。同じ金額でより多くの口数を買う仕組みなので、止めるとその効果だけを取りこぼします
- 見るべきは今日の値段ではなく、使う時期。取り崩しが何年も先なら、今日の下げは通過点として扱えます
ただし、そのお金を数年以内に使う予定がある場合は別です。値動きが戻るのを待てない資金は、下がる前に投資へ回さないのが原則で、すでに入れてしまっている場合は「相場を見て」ではなく「必要な時期を基準に」計画を組み直してください。生活費や当面の予備資金まで投資に入っている場合も同じです。
それでも不安な日に、やっていいこと
「何もしない」が既定解だとしても、不安な気持ちのまま放置するのはつらいものです。相場に手を出さずにできることが3つあります。
- 見る回数を減らす。評価額を1日に何度も見ると、そのたびに判断を迫られます。減らしていいのは積立額ではなく、確認の回数です
- 使う時期を書き出す。「このお金は何年後に何のために使うか」を一行メモにしておくと、下げが通過点かどうかを値段ではなく期限で判断できます
- 止めるのではなく、額を下げる。眠れないほどの金額なら、積立を止めるより「無理のない金額に変える」ほうが再開の判断が要りません。仕組みを止めずに緊張だけ下げられます
3つとも、相場の先読みを一切必要としません。下落の日に自分で決めてよいのは、こうした相場と関係のないことだけ——そう線を引いておくと、荒れた日の消耗がぐっと減ります。
下落の日の向き合い方・早見表
- 起きていること:値段が動いたというより、決めなくてよかったことを決めさせられている
- 最初の確認:減ったのは株価か為替か(切り分けは事実確認なので安全)
- 売る:買い戻す時期が宿題になる。NISAは枠の復活が翌年、損益通算も不可
- 積立を止める:再開時期が宿題になる。安い月に多く買う効果を取りこぼす
- 既定解:売らない・止めない。ただし数年以内に使うお金は時期を基準に組み直す
- やっていいこと:見る回数を減らす/使う時期を書き出す/止めずに金額を下げる
暴落のニュースが流れる日は、「何もしないこと」がいちばん勇気を要する選択に見えます。でも中身を分解してみると、売ることも止めることも、今日の不安を、明日の宿題に付け替えているだけだと分かります。すでに決めてある仕組みをそのまま走らせておくことは、放置ではなく判断です。下がった日に自分で決めることを増やさない——これだけ守れれば、次の下落も同じやり方で通り過ぎられます。
※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。