口座の申込画面の一番最初で止まってます…。「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」って出てきて、どれを押しても取り返しがつかない気がして…。
ここは本当に多くの人が止まる場所だね。先に結論を言うと、特別な事情がなければ「特定口座(源泉徴収あり)」でOK。違いは1つだけで、「税金を証券会社に引いてもらうか、自分で申告するか」なんだ。しかもあとから変えられる期限があるから、今日の1回で人生が決まるわけじゃないよ。
NISAと特定口座のどちらで買うかで迷っている人は、先にNISA成長投資枠と特定口座、どっちで買う?を読むと、この記事の位置がわかりやすくなります。
この記事でわかること
- 「源泉徴収あり/なし」で変わるのは何か(違いは1つだけ)
- 引かれる税率と、10万円の利益で実際にいくらか
- 「20万円以下なら申告不要」を信じて損をする瞬間
- 迷いどころの既定解と、逆の答えになる人の条件
- あとから変更できるのは、いつまでか
そもそも:特定口座とは何をしてくれる口座か
株や投資信託を売って利益が出たら、税金がかかります。本来なら「いくらで買って、いくらで売って、利益はいくらか」を自分で計算しなければなりません。
これを証券会社が代わりに計算してくれるのが特定口座です。1年が終わると「特定口座年間取引報告書」という書類が届き、申告が必要な場合もその紙を見ながら簡単に済ませられます(出典:国税庁 タックスアンサー No.1476「特定口座制度」)。
つまり**「あり」も「なし」も、計算は証券会社がやってくれる**点は同じです。ここが最初の安心材料です。
あれ、計算が同じなら…「あり」と「なし」は何が違うんですか?
違うのは「税金を納める作業を誰がやるか」だけ。計算までは同じ人(証券会社)がやって、その先の納税を代行してもらうかどうかの分かれ道なんだ。
違いは「納税を代行してもらうか」だけ
| 源泉徴収あり | 源泉徴収なし(簡易申告口座) | |
|---|---|---|
| 損益の計算 | 証券会社がやる | 証券会社がやる |
| 税金を引くタイミング | 売るたびに自動で引かれる | 引かれない |
| 確定申告 | しないことを選べる | 利益が出たら原則必要 |
| 手取り | 税引き後の金額が入る | 税金の分も一度は口座に入る |
「あり」を選ぶと、上場株式等を売って利益が出るたびに、その利益に対して**15.315%(ほかに住民税5%)が自動で差し引かれます。合計で20.315%**です。そしてこの口座の利益は、確定申告をしないことを選べます(出典:国税庁 No.1476)。
「なし」を選ぶと税金は引かれません。そのかわり、利益が出た年は自分で確定申告をして納めることになります。
数字の翻訳:10万円の利益で、いくら引かれるのか
利益 100,000円 × 20.315% = 税金 20,315円
「あり」なら、売った時点で20,315円が引かれ、79,685円が口座に入ります。手続きはこれで完了です。
「なし」なら、10万円がそのまま口座に入ります。ただしそれは「税金が要らない」のではなく、あとで自分で20,315円を納めるという意味です。ここを勘違いしたまま使ってしまうのが、一番痛い間違いです。
「20万円以下なら申告不要」の落とし穴
「なし」を選ぶ人がよりどころにしがちなのが、いわゆる20万円ルールです。
給与を1か所から受けている会社員で、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える人は確定申告が必要——裏を返すと、20万円以下なら所得税の確定申告は要らない、という決まりです(出典:国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」)。
ただし、これは所得税だけの話です。
見落としやすい点:住民税には20万円ルールがない
横浜市は市民税・県民税のQ&Aで、給与以外の所得の合計額について「合計額が20万円以下の場合には、原則確定申告は不要ですが、市民税・県民税の申告は必要となります」と案内しています(出典:横浜市「市民税・県民税の申告について」)。
つまり「20万円以下だから何もしなくていい」ではなく、税務署に行かないかわりに市区町村へ申告するのが本来の姿です。手続きが減るのではなく、行き先が変わるだけ、と考えてください。
えっ…「20万円以下なら何もしなくていい」ってどこかで見た気がしてました。役所への申告が残るなら、手間はあまり減らないですね…。
そう。「なし」で浮くのは所得税のぶんであって、手続きそのものではない。私はここが分かれ目だと思っていて、毎年の手続きを自分で管理し続ける自信があるかどうかで選べばいいと考えているよ。
迷いどころの既定解
迷いどころの既定解(これでOK)
- 特別な事情がなければ「特定口座(源泉徴収あり)」でOK。理由は3つです。
(1) 売った時点で納税まで終わる——この口座の利益は確定申告をしないことを選べます(国税庁 No.1476)。忘れる余地がありません。
(2) 「あとで納める分」を使ってしまう事故が起きない——税引き後の金額しか口座に入らないので、手元の数字がそのまま自分のお金です。
(3) 選択肢が減らない——「あり」でも、申告したほうが有利な年には口座ごとに申告を選べます(同上)。先に閉じてしまう扉がありません。 - ただし逆の答えになる人もいます。下の「例外」を読んで当てはまらなければ、「あり」で問題ありません
- NISA口座で積み立てているだけの人は、そもそもこの選択が出番になりません(NISAは非課税なので源泉徴収の対象外)。それでも申込時に必ず聞かれるので、「あり」を選んでおけば、将来NISAの外で買うときにそのまま使えます
例外:逆の答えになりやすい人
- 複数の証券会社を使っていて、片方で損が出る年がある人:口座をまたいだ損益通算や、損失を翌年以後3年間くり越す繰越控除は、どちらも確定申告が必要です(出典:国税庁 タックスアンサー No.1474)。ただしこれは「あり」でもできます。申告する年だけ申告すればよいので、これ自体は「なし」を選ぶ理由にはなりません
- 扶養に入っている学生・配偶者:申告するかどうかで、判定に使われる所得の扱いが変わります。国税庁は、源泉徴収選択口座の利益で確定申告をしないことを選んだものを、給与所得者の申告要否を判定する所得の合計に含めないとしています(同 No.1900)。扶養や社会保険料の判定基準は制度ごとに違うため、該当する人は勤務先・市区町村・税務署に確認してください
- もともと毎年確定申告をしている人(個人事業主など):どちらでも手間は大きく変わりません。判断材料は税金の有利不利ではなく、日々の管理のしやすさになります
あとから変更できるのは、いつまでか
ここが一番の安心材料です。この選択は一生ものではありません。
変更の期限(国税庁 No.1476)
- 源泉徴収を選ぶには「特定口座源泉徴収選択届出書」を、その年の最初の譲渡(売却)の時までに証券会社へ出す
- この選択は年単位。そのため、年の途中で「源泉徴収をやめる」変更はできない
読み替えると、その年にまだ1回も売っていなければ切り替えられるということです。積立を始めたばかりで、まだ何も売っていない人には、当面いつでも直せる余地があります。
じゃあ、今日の選択で固定されるわけじゃないんですね。ちょっと肩の力が抜けました。
うん。ただし手続きの締め切りは証券会社ごとに前倒しで設定されていることがあるから、変えたくなったら早めに問い合わせてね。もちろん税額の有利不利は人によって違うから、迷ったら税務署か税理士に確認するのが確実だよ。
「あり」を選んだ人が、やらなくていいこと
- 売るたびに税金を計算してメモしておく(証券会社が計算して引きます)
- 利益が20万円を超えたかどうかを毎月数える(申告不要を選べば、この判定に含まれません・国税庁 No.1900)
- 「損が出たから今年は申告しなきゃ」と急ぐ(申告するかどうかは口座ごとに選べます。損失を活かしたい年だけ考えれば十分です)
損が出た年の扱いはNISAの損は損益通算できない|特定口座との違いに、配当にかかる税金の内訳は米国株の配当金にかかる税金にまとめています。
なお「あり」の口座には、配当金を受け入れる設定にすると、その口座で出た売却損と配当が自動で相殺されるという仕組みもあります(国税庁 No.1476)。使うかどうかは後から決められるので、口座を作る今日の時点で悩む必要はありません。
まとめ
- 違いは「納税を代行してもらうか」だけ。損益の計算はどちらも証券会社がやる
- 「あり」=売るたびに20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)が引かれ、確定申告をしないことを選べる
- 「20万円以下なら申告不要」は所得税の話。住民税の申告は別に必要(横浜市の案内)
- 既定解は「源泉徴収あり」。忘れる余地がなく、あとから申告する選択肢も残る
- 変更できるのはその年の最初の売却まで。年の途中で源泉徴収をやめることはできない
口座開設の画面で手が止まるのは、「間違えたら取り返しがつかない」と感じるからです。でもこの選択に限っては、まだ1回も売っていなければやり直せる——期限が決まっている、という事実のほうが効きます。決めきれない日は「あり」を選んで先に進み、必要になったときに考え直せば十分です。
※税率・制度は執筆時点(2026年8月)の国税庁の資料にもとづきます。個別の税額や扶養・社会保険の判定は状況によって異なるため、最終的な判断は税務署または税理士にご確認ください。
※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買や口座区分を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。