SNSで「プット・コール・レシオが急上昇」という投稿が流れてきて、手が止まった人へ。
聞き慣れないカタカナの数字が上がっていると、それだけで何か悪いことが起きそうな気がしますよね。
結論から言うと、積立の設定はそのままでいいと私は考えています。今日やることはありません。
積立をしている人は、こういう数字の動きを毎日追わなくて大丈夫です。
今回読んだもの: Cboe(米国のオプション取引所)の公式データ「Daily Market Statistics」(英語)と、野村證券・楽天証券の用語の説明。
プット・コール・レシオは「傘」と「日焼け止め」の比率
そもそも、から話します。
オプションは「あとで、決めた値段で売り買いする権利」の取引です。
- プット=売る権利。値下がりに備えたい人が買う
- コール=買う権利。値上がりを期待する人が買う
プット・コール・レシオは、プットの量をコールの量で割った数字です。
身近に言うと、天気予報を見た人たちが「傘」と「日焼け止め」のどちらを多く買ったか、の比率に近いんです。傘(プット)が多い日は、雨=値下がりに備える人が多い日。
野村證券の用語集によると、弱気な投資家が多いとプットの残高が増え、この数字は上がりやすくなります(野村證券 証券用語解説集「プット・コール・レシオ」・2026年10月2日確認)。楽天証券は、数字の上昇は「弱気派の優位」を示す、と書いています(楽天証券「プット・コールレシオ」より・2026年10月2日確認)。
直近の9月30日、Cboe全体の数字は0.88でした。コールが100枚(契約の単位)取引されたのに対して、プットが88枚。傘と日焼け止めが、だいたい同じくらい売れた日ですね(Cboe「Daily Market Statistics」・2026年9月30日分)。
同じ名前でも、計算のしかたが3通りある
ここが、調べていていちばん「えっ」となったところです。
「プット・コール・レシオ」という同じ名前なのに、何で割るかが出すところによって違います。
| 出しているところ | 何と何を比べるか | 対象 |
|---|---|---|
| Cboe | その日に取引された数(出来高) | Cboeの取引所で取引された米国のオプション。全体・個別株・指数などに分けて公表 |
| 野村證券の用語集 | まだ残っている契約の数(建玉残高) | 一般的な説明 |
| 楽天証券 | 売買代金の5日平均 | 楽天証券での日経225オプションの取引 |
出典:Cboe「Daily Market Statistics」/野村證券 証券用語解説集/楽天証券「プット・コールレシオ」(いずれも2026年10月2日確認)
つまり、SNSで「1を超えた」と言われても、どの数字の話なのかで意味が変わるということです。
同じ日でも、0.53と1.09
Cboeは、同じ日の数字を種類別に出しています。9月30日の分を並べてみます。
| 種類 | 9月30日 |
|---|---|
| 全体(TOTAL) | 0.88 |
| 個別株のオプション(EQUITY) | 0.53 |
| S&P500指数のオプション(SPX+SPXW) | 1.09 |
出典:Cboe「Daily Market Statistics」(2026年9月30日分・2026年10月2日確認)
同じ日なのに、個別株は0.53、S&P500は1.09。約2倍の開きです。
片方だけ切り取れば「楽観ムード」とも「悲観ムード」とも言えてしまうんですよね。
怖さが強かった日と比べても、目安どおりにはいかない
では、VIX(恐怖指数)が30を超えた日はどうだったのか。VIXが高い日、積立はどうする?で取り上げた3日を、Cboeのデータで並べました。
| 日付 | VIXの終値 | 全体 | 個別株 | S&P500 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年8月5日 | 38.57 | 1.28 | 0.77 | 2.71 |
| 2025年4月8日 | 52.33 | 1.23 | 0.77 | 1.77 |
| 2026年3月27日 | 31.05 | 0.96 | 0.56 | 1.21 |
| 2026年9月30日(参考) | 16.34 | 0.88 | 0.53 | 1.09 |
出典:プット・コール・レシオはCboe「Daily Market Statistics」(各日分・2026年10月2日確認)、VIXの終値はCboe「VIX History」(2026年10月2日確認)
わかることは2つです。
- VIXが30を超えた3日とも、個別株の数字は1を下回っていた
- 2026年3月27日はVIXが31.05もあったのに、全体の数字は0.96。ふだんどおりの9月30日(0.88)と、それほど変わらない
S&P500の数字は、3日とも1を大きく超えていました。ただ、ふだんどおりの9月30日も1.09で、やっぱり1を超えています。
ネットでは「1を超えたら悲観」という目安を見かけることがあります。でも実際の数字を並べると、怖さが強かった日でも、どの種類を見るかで1を超えたり超えなかったりします。
数字の温度計が2本あって、ときどき違う温度を指す。それくらいに思っておくのがちょうどいいです。
私の見方:数字は「自分の怖さ」と比べるために見る
ここからは、あくまで私の考えです。
私は下落のとき、VIXとプット・コール・レシオを見ています。
きっかけは失敗です。積立の初期に、SNSやネットの「暴落だ」「まだ下がる」という言葉を毎日浴びて、怖くなって全部売ってしまいました。その話は積立を一度売ってしまった後悔が消えないときに書いています。
あのときの私は、自分が怖いのか、周りの言葉に怖がらされているのか、区別がついていませんでした。
いまは数字で「市場全体で、傘を買う人がどのくらいいるか」を見ます。それで怖がっているのは自分だけじゃないと分かると、少し落ち着けるんです。積立の金額は一定のまま。毎日の値動きも見ません。
でも、みんなが怖がってる日って、逆に多めに買ったほうがいいって聞いたこともあって…。数字が高い日は、何かしたほうがいいんですか?
その気持ち、わかるよ。でも私は、この数字を見て押すボタンは1つもないんだ。上で見たとおり、同じ日でも0.53と1.09。どれを見るかで話が変わる数字に、自分のお金の動かし方を預けなくていいんじゃないかな。
※これは私のやり方で、プット・コール・レシオを見ることをすすめているわけではありません。見ると不安が増える人は、見ないのがいちばんです。
止めるのも、数字を見て増やすのも、やらない
迷ったらこれ
プット・コール・レシオが高い日も、積立の設定は触らない。数字は「下がりに備える人の多さ」として眺めるだけ。理由は3つです。
- 計算のしかたで値が大きく変わる。同じ日でも0.53と1.09だった
- VIXが30を超えた日でも、1を下回る種類があった。目安がそのまま当てはまらない
- 積立は、もともと値段を選ばずに買い続けるしくみ。数字を見て止めたり増やしたりすると、そのしくみに自分の判断を毎回はさむことになる
積立のしくみについては、金融庁も、決まった額で買い続けると「高いときにだけ買ってしまうこと」を避けられる、と説明しています(金融庁 NISA特設ウェブサイト「資産形成の基本」・2026年10月2日確認)。
ここだけは気をつけてください
- プット・コール・レシオは、この先上がるか下がるかを当てる数字ではありません。その日にどんな取引が多かったか、の記録です
- オプション取引そのものは、積立とはまったく別ものです。野村證券の注意書きにも、先物・オプション取引には「元本を超える損失が生じるおそれ」があると書かれています
- 下がった日にやりがちなことと、その日にやっていいことは、米国株が暴落したらどうする?で話しています
まとめ
まとめ:プットコールレシオの見方
- プット・コール・レシオは「傘(値下がりへの備え)」と「日焼け止め(値上がりへの期待)」の比率
- 同じ名前でも、出来高・建玉残高・売買代金と計算のしかたが違う
- 9月30日は全体0.88/個別株0.53/S&P500 1.09。同じ日でも約2倍の開き
- VIXが30を超えた日でも、個別株の数字は1を下回っていた
- 積立の設定はそのまま。数字は眺めるだけでいい
傘の数がわかると、雨の日も少し落ち着いて眺められます。今日はここまで。焦らずいきましょう。
※当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。プット・コール・レシオの数字はCboe・各社の公開情報によるもので、将来の値動きを示すものではありません。