「定期的にリバランスしましょう」って、どの本にも書いてあるんです。でも僕、オルカンとS&P500を積み立ててるだけで…。比率、たぶん崩れてますよね。直さないとまずいですか?やり方も分からなくて、ずっと気になったままなんです。
先に結論。インデックスの投信を1〜2本積み立てているだけなら、リバランスは基本的に要らないよ。ただ「要らない」と言われても、崩れている気がして落ち着かないよね。だから今日は実際に何ポイントずれたのかを、公式の数字で測ってしまおう。測ってしまえば、気にする理由がなくなるから。
この記事を読み終えると、次のことがわかるようになります。
この記事でわかること
- そもそもリバランスとは何を直す作業なのか(3行で)
- オルカン+S&P500の比率が、3年・5年で実際に何ポイントずれたか
- プロ(GPIF)はどれだけずれたら直すのか、という物差し
- NISA口座でリバランスすると、制度上いくら損なのか
- 積立勢の既定解(理由3つ・例外つき)と、それでも整えたい人の手順
オルカンとS&P500を両方積み立てている理由そのものに迷いがある方は、先にオルカンとS&P500の両方積立は無駄?を読むと、この記事の前提がつかみやすくなります。
そもそも:リバランスは「値段」ではなく「比率」を直す作業
そもそもリバランスとは
あらかじめ「株式60%・債券40%」のように決めておいた資産の配分が、値動きでずれてきたときに、増えたほうを売って減ったほうを買い、元の比率に戻すこと。目的は儲けることではなく、リスクの取りすぎ/取らなさすぎを元に戻すことです。だから「上がったから売る」でも「安いから買う」でもありません。
ここで大事なのは、リバランスは**「自分で決めた配分がある人」の作業**だという点です。配分を決めていない人には、戻すべき元の位置がありません。
…僕、「オルカンとS&P500を1万円ずつ」としか決めてないです。それって配分を決めたことになるんでしょうか。
それは「毎月の買い方」を決めただけで、「資産全体をどんな比率で持つか」はまだ決めていない状態だね。悪いことじゃないよ。むしろ中身がどちらも株式100%のインデックスだから、比率がずれても性格はほとんど変わらない。次の検証でそれを確かめよう。
検証:5年で比率は何ポイントずれたのか
「崩れる」と言われると大きくずれる印象がありますが、実際の数字を当ててみます。使うのは代表的な2本の公式サイトに載っている騰落率(分配金再投資ベース・基準日2026年8月10日)です。
| 期間 | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) |
|---|---|---|
| 1年 | +30.77% | +32.52% |
| 3年 | +96.86% | +93.11% |
| 5年 | +165.63% | +145.24% |
参照:eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)/eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
この2本に50万円ずつ、ちょうど半分ずつ置いていたら、比率はいまどうなっているか。上の騰落率をそのまま当てはめて計算します。
| 置いた時期 | S&P500 | オルカン | 比率 |
|---|---|---|---|
| スタート時 | 50.0万円 | 50.0万円 | 50:50 |
| 3年前に置いた場合 | 約98.4万円 | 約96.6万円 | 50.5:49.5 |
| 5年前に置いた場合 | 約132.8万円 | 約122.6万円 | 52.0:48.0 |
5年放置して、ずれは2.0ポイント。3年ならわずか0.5ポイントです。「崩れる」という言葉から想像するほどは動いていません。
さらに1年だけを見ると、勝っているのはオルカンのほう(+32.52% 対 +30.77%)です。片方が一方的に膨らみ続けるわけでもない、ということがここから読み取れます。
プロの物差し:GPIFは「±5〜6%」まで動かさない
2.0ポイントのずれが大きいのか小さいのか、判断する物差しが要ります。そこで、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基準を借ります。
GPIFは国内債券・外国債券・国内株式・外国株式を25%ずつ持つと決めていますが、同時に「乖離許容幅」も公表しています。2025年4月1日から適用されている第5期の許容幅は、国内債券±6%・外国債券±5%・国内株式±6%・外国株式±6%です(参照:GPIF「基本ポートフォリオの考え方」)。
つまり外国株式なら、19%〜31%の間にいるかぎり何もしない。25.5%になった程度では動きません。
え、あんなに大きな年金のお金でも、そんなに放っておくんですか…?もっと毎日ぴったり直しているのかと思ってました。
そこが一番の学びどころだと思う。GPIF自身が「短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて長期間維持していくほうが、効率的で良い結果をもたらすことが知られています」と書いているんだ。ずれを直すこと自体が目的なら、許容幅なんて要らないよね。許容幅があるのは「多少のずれより、いじらないことのほうが大事」だと分かっているからだよ。
先ほどの2.0ポイントを、この物差しに載せてみます。GPIFなら±5〜6%まで放置する。5年放置した個人の2.0ポイントは、プロの基準では「ずれ」として扱われない水準、ということになります。
NISA口座でリバランスすると、制度上のコストが乗る
もうひとつ、日本の積立勢に特有の事情があります。NISA口座の中で売ると、非課税枠を使い直せるのが翌年以降になるという点です。
2024年からのNISAでは非課税保有限度額(総枠1,800万円)の再利用ができるようになりました(参照:金融庁「NISAを知る」)。ただし戻ってくるのは翌年で、金額も買ったときの値段(簿価)の分です。値上がりした分は戻りません。この仕組みはNISAの枠は売ったら復活する?で数字を追って検証しています。
これをリバランスに当てはめると、こうなります。
- 増えたほうを10万円分売る → その年の枠は戻らない
- 減ったほうを10万円分買う → 今年の枠を10万円分、新たに消費する
- 翌年、売った分の簿価が総枠に戻る
比率を2ポイント直すために、今年の投資枠を使ってしまう。しかも枠が戻るのは翌年です。課税口座なら「売買手数料と税金」で済む作業が、NISA口座では「枠」というもっと戻しにくい資源を使う——ここが、日本の積立勢がリバランスに慎重でいい理由です。
積立勢の既定解
迷いどころの既定解(これでOK)
インデックスの投信を1〜2本積み立てているだけなら、リバランスはしなくていい。比率を確認するのも年1回で十分です。
- 理由1:ずれが小さい。5年放置しても2.0ポイント(上記検証)。プロの許容幅±5〜6%の中に収まっている
- 理由2:中身のリスクがほぼ同じ。オルカンもS&P500も株式100%のインデックスで、比率が動いても資産全体の性格は大きく変わらない
- 理由3:NISAでは直すコストが高い。売っても枠は翌年まで戻らず、買い直しで今年の枠を減らす
ただし次に当てはまる人は例外です。
リバランスを検討したほうがいい3つのケース
- 現金・債券を含めた配分を自分で決めている人(例:株式60%・現金40%)。値動きの違う資産を組み合わせているときは、ずれが大きくなりやすく、放置するとリスクの量が変わります
- お金を使う時期が近い人(数年以内に取り崩す予定がある)。この場合に必要なのは比率合わせより、使う予定の金額を値動きのある資産から外していく作業です
- 個別株や一部の業種に大きく偏っている人。1銘柄が資産の大半を占めるような状態は、インデックス2本のずれとは別の話になります
それでも整えたい人へ:売らずに、買う側で寄せる
「例外に当てはまる」あるいは「どうしても比率を戻したい」場合でも、いきなり売る必要はありません。積立をしている人は、毎月の買付そのものがリバランスの道具になるからです。
いまの比率を1回だけ数える
証券会社の保有商品一覧で、それぞれの評価額をメモします。合計に対する各商品の割合を出すだけです。ここでは売買しません。
目標の比率と、動かさない幅を決める
「S&P500 50%・オルカン50%」のように目標を書き、あわせて**「±5%を超えたら考える」**のような許容幅も決めます。幅を先に決めておくのが肝心で、これがないと毎月の小さなずれが全部「気になること」に変わってしまいます。
次の積立から、比率の小さいほうを多めに買う
例えばS&P500が52%・オルカンが48%なら、来月からしばらくオルカンの積立額を少し増やします。売らないのでNISAの枠も税金も動きません。これが「ノーセル・リバランス」と呼ばれる方法です。
売らなくていいなら、気が楽です…!でも、それだと戻るのに時間がかかりますよね?
かかるね。でも思い出してほしいのは、そのずれは5年かけて2ポイント積み上がったものだということ。5年かけてできたずれを、今日中に直す理由はないよ。私なら売らずに買う側で寄せて、あとは放っておく。もちろん相場の先は誰にも分からないから、これは「正解」ではなく私の決め方だけどね。
やらなくていいこと
この件で、やらなくていいこと
- 毎月の比率チェック(年1回で十分。見る回数を増やすと直したくなる)
- 1〜2ポイントのずれを直すための売却
- 「リバランスのために」NISA枠を使うこと
- 下がった月にあわてて配分を変えること(それはリバランスではなく相場観の変更です。下落時の考え方は米国株が暴落したらどうする?へ)
まとめ
この記事のまとめ
- リバランスは「自分で決めた配分」を戻す作業。配分を決めていないなら、戻す先がない
- オルカンとS&P500を半分ずつ置いた場合、ずれは3年で0.5ポイント・5年で2.0ポイント(公式の騰落率からの概算)
- GPIFの乖離許容幅は各資産±5〜6%。2.0ポイントはプロの基準では動かさない範囲
- NISA口座で売ると、枠が戻るのは翌年・簿価の分だけ。直すコストが制度的に高い
- 既定解=インデックス1〜2本ならリバランス不要。整えたい場合は売らずに、次の積立で比率の小さいほうを多めに買う
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。