このあいだ「雇用が強すぎて株が下がった」ってニュースを見ました。仕事が増えるのは良いことなのに、なんで株が下がるんですか??
いいところに気づいたね。雇用統計は「良いニュース=株高」とは限らない、ちょっとクセのある指標なんだ。カラクリはここでも「金利」。一度分かれば、月に1回の金曜の夜に振り回されなくなるよ。
この記事でわかること
- 雇用統計はいつ・何時に出るか(日本時間)と次回日程
- 見るべき3つの数字(雇用者数・失業率・平均時給)
- 「強い雇用で株安」が起きる理由
- 速報値が翌月に書き換わる仕組み(改定)
- 積立勢の既定解
次回の発表日
次回の米雇用統計
2026年9月4日(金)日本時間 21:30(2026年8月分)
なお、年に1度の「予備ベンチマーク改定」(大きな見直しの速報値)は、2026年8月28日(金)日本時間 23:00 に公表済みです。仕組みは下の「年に1度、まとめて書き換わる日もある」で説明します。
※原則、毎月第1金曜(例外月もあります)。このページは発表のたびに次回日程へ更新しています(最終更新: 2026-08-31)。公式日程は米労働統計局(BLS)の発表スケジュールで確認できます。
見るのは3つの数字
雇用統計(Employment Situation)は米労働統計局(BLS)が毎月発表する、アメリカの働く人たちの統計です。発表は米国東部時間の朝8:30=日本時間21:30(米国冬時間は22:30)。市場が見るのは主に3つです。
雇用統計で見る3つの数字
- ① 非農業部門雇用者数(NFP) ── 1か月で仕事が何万人分増えたか。見出しになる主役の数字で、「予想との差」で市場が動きます
- ② 失業率 ── 働きたい人のうち仕事がない人の割合
- ③ 平均時給(前年比) ── 賃金の上昇ペース。賃金インフレの体温計として、FRBが特に気にする数字です
「良い数字なのに株安」のカラクリ
| 順番 | 何が起きるか |
|---|---|
| 1 | 雇用者数や賃金が予想より強い |
| 2 | 「景気が熱い=インフレが下がりにくい」と市場が受け止める |
| 3 | FRBが金利を高いまま維持しそうだ、という見方が強まる |
| 4 | 金利の重しで株(特に成長株)が売られる |
逆に、雇用が予想より弱いと「利上げが遠のく(利下げが近づく)」と受け止められて株高になる日もあれば、弱すぎると「景気後退が心配」でやっぱり株安になる日もあります。実際、2026年7月分(8月7日発表)は雇用者数が減少したにもかかわらず、S&P500は最高値を更新しました。
強くてもダメ、弱くてもダメって…もう分かりません!
そう、その「分からない」が正解なんだ。同じ数字でも、そのときの市場の関心事によって反応が逆になる。だからこそ、発表に合わせて売買するのは分の悪い勝負で、積立勢は距離を置くのが合理的なんだよ。
そもそも、当日の数字はあとで書き換わる
見出しになる雇用者数は、その日限りの確定値ではありません。BLSは毎月の発表で、過去2か月分の数字を修正して出し直します(企業からの報告が後から届くため)。つまり当日の速報値は「まだ確定していない下書き」です。
前回(2026年8月7日発表・7月分)は、こうでした。
前回発表(2026年7月分)の数字
- 非農業部門雇用者数 2万3000人の減少(市場の事前予想は+8万人。過去12か月の平均月間増加数は+3万4000人)
- 失業率 4.1%
- 平均時給 前年比+3.2%(37.62ドル・前月比+2セント)
- 同時に、5月分が+12万9000人→+6万3000人、6月分が+5万7000人→+2万人にそれぞれ下方修正。2か月合計で10万3000人少なく書き換えられました
出典: 米労働統計局(BLS)「The Employment Situation — July 2026」/予想値はザイFX! ニューヨーク外国為替市場概況・7日
数字を並べ替えると、意味が見えてきます。その月の増減(-2万3000人)より、過去2か月から取り消された分(10万3000人)のほうが4倍以上大きかった、ということです。
このページには前回まで「6月分は+5万7000人」と書いてありました。その数字が1か月後に+2万人へ書き換わった、というのが今回起きたことです。当日の速報値だけを見て方針を決めることの危うさが、そのまま出た形でした(この週の値動きは今週の米国株ふりかえり(8/3-7)にまとめています)。
年に1度、まとめて書き換わる日もある
毎月の改定とは別に、BLSは年に1度、雇用保険の税務記録にもとづく「ベンチマーク改定」で数字をまとめて修正します。その速報値が公表されるのが2026年8月28日(金)米国時間10:00=日本時間23:00です(確定値は2027年2月)。
こちらも積立勢がやることは変わりません。過去の数字が書き換わっても、毎月同じ金額で買い続ける設計そのものは影響を受けないからです。「後から大きく修正されることがある統計だ」と知っておけば十分です。
えっ。じゃあ発表の夜にニュースを見て考えても、その数字自体が翌月には別の数字になっているかもしれないんですか?
そういうこと。私はこれを「速報値は鉛筆書き」と理解しているよ。下書きの段階で長期の方針を書き換えない——これが私の立場。もちろん未来は誰にも分からないから、下書きが正しかったと後で分かる月もある。それでも、確定を待てる人が方針を毎月ぶらさずに済むのは確かだよ。
積立勢の既定解
既定解:雇用統計の夜も、積立勢は何もしなくていい
理由は3つです。
- 反応の向きが読めないイベントだから ── 強くても弱くても株安になり得る指標で事前に動くのは、コインの裏表当てに近い勝負です
- 毎月の積立が反応を平均化してくれるから ── 12回の雇用統計をまたいで買い続けることが、そのまま時間分散になります
- 本当に大事な変化はあとから分かるから ── 上で見たとおり速報値は翌月以降に改定されます。景気の転換点が1回の統計で確定することはなく、翌朝以降の落ち着いた解説で十分間に合います
金曜夜ならではの注意
雇用統計は金曜夜のため、結果を受けた米国市場の値動きを見たあと、日本の投資家は週末をはさんで月曜まで何もできません。この「持ち越し不安」で週末に売買したくなる人が多いのですが、積立勢にはそもそも関係のない不安です。安心して週末を過ごしてください。
まとめ
まとめ:雇用統計の見方3点
- 原則第1金曜・日本時間21:30(冬は22:30)。次回は上の「次回の発表日」を確認
- 見るのは雇用者数・失業率・平均時給。反応の向きは市場の関心事しだい
- 速報値は過去2か月分がのちに改定される「下書き」。前回(7月分)は2か月合計で10万3000人下方修正された
- 積立勢の既定解は「何もしない」。金曜夜は安心して寝てOK
雇用統計と並ぶもう一つの主役がCPI(消費者物価指数)です。2つセットで「金利ニュースの読み方」が完成します。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。