※紹介する画面・仕様は執筆時点のものです。最新の条件は必ず各社の公式サイトでご確認ください。

こねこ
こねこ(投資1年目)

先週、S&P500がけっこう下がった日に「今だ!」と思って注文したんです。でも数日後に取引履歴を見たら、買えていた値段が下がる前くらいで…。私、操作をミスしたんでしょうか?

トリ
トリ(管理人)

ミスじゃないよ。それが投資信託の正しい動き方なんだ。海外資産の投資信託は「注文した日」ではなく「その翌営業日」の値段で買えるルールになっている。しかも注文した時点では、誰も値段を知らない。
ここを知らないと「安い日を狙って買う」という作戦そのものが成り立たなくなるから、一度だけ整理しておこう。

この記事でわかること

  • 投資信託の「申込日・約定日・受渡日」という3つの日付の意味
  • なぜ注文した日の値段で買えないのか(ブラインド方式と時差)
  • 1日ズレると、実際いくらの差になるのか(積立の1回分で計算)
  • ズレを気にしなくていい人/逆算したほうがいい人(既定解)

そもそも投資信託とETFのどちらで買うか整理できていない人は、先にS&P500は投資信託とETF、どっちで買う?を読むと、この記事の話がどちらに当てはまるのかがはっきりします(この記事は投資信託の話です)。

そもそも「基準価額」とは

投資信託の値段のことを基準価額といいます。株価と決定的に違うのは、次の2点です。

  • 基準価額は、1日に1つしか付かない(株のように刻々と動かない)
  • しかも、注文の受付を締め切ったあとに計算されて公表される

つまり、あなたが注文ボタンを押す時点では、その取引に使われる値段はまだこの世に存在していません。この仕組みをブラインド方式と呼びます。すでにその投資信託を持っている人が不利にならないように、あえてこうしてあります(出典:資産運用業協会「基準価額と分配金」)。

こねこ
こねこ

え、値段が分からないまま「買います」って押してるんですか…? それ、けっこう怖いんですけど…。

トリ
トリ

気持ちは分かる。でも逆に言えば、全員が同じ条件で、誰も抜け駆けできないということでもあるんだ。値段が先に分かってしまうと、それを見てから駆け込める人だけが得をする。そうならないための仕組みだよ。

3つの日付を分けて考える

投資信託の取引には日付が3つ出てきます。ここが混ざると「反映されない」と感じます。

▼ 投資信託の3つの日付(イメージ図)
日付 意味 月曜に注文した場合
申込日 注文を出した日(締切時刻まで) 月曜
約定日 適用される基準価額が決まる日 火曜の基準価額
受渡日 代金が実際に精算される日 金曜(申込受付日から5営業日目)

具体例として、新NISAで多くの人が積み立てている「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の条件を見てみます。楽天証券の取扱ページには、こう書かれています。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の取引条件

  • 締切時間:15:30(これを過ぎた注文は翌営業日扱い)
  • 約定日と基準価額:お買付申込日の翌営業日の基準価額
  • 受渡日:申込受付日から起算して5営業日目

出典:楽天証券 ファンド詳細(eMAXIS Slim 米国株式(S&P500))交付目論見書(三菱UFJアセットマネジメント・2026年7月25日)。条件はファンドごとに違うので、自分の持っているファンドの数字を確認してください。

なお、換金(売却)のときも同じように日数がかかります。投資信託は原則いつでも解約を申し込めますが、実際にお金が口座に入るまでには4営業日以上かかるのが一般的です(出典:資産運用業協会「換金の種類と手続き」)。

なぜ「翌営業日」なのか=時差の問題

国内の株式に投資する投資信託なら、申込日の基準価額で約定するものもあります。海外資産で1日ズレるのは、単純に時差のせいです。

米国市場が開いているのは日本時間の夜(夏時間でおおむね22:30〜翌5:00)です。詳しくは米国株は日本時間の何時に取引できる?にまとめていますが、要するに——日本時間の15:30に注文を締め切った時点では、その日の米国の終値はまだ決まっていません。存在しない数字では計算できないので、翌営業日に持ち越されるわけです。

こねこ
こねこ

あ……。「昨日の夜アメリカが下がったから、今朝すぐ買おう」と思ってたんですけど、それだと反映されるのは今夜の値動きのほう、ということですか?

トリ
トリ

そういうこと。「昨日の下げ」を買うことはできないんだ。買えるのは、これから起きる今夜の値動きを含んだ値段。ここが、安い日を狙いたくなる人がいちばん誤解するところだよ。

1日ズレると、いくら違うのか

ここは数字にしてしまうのが早いです。同ファンドの2026年8月7日の基準価額は44,975円で、前日比は+162円(+0.36%)でした(出典:eMAXIS 公式サイト)。この日の値動きの幅を使って、1日ズレた場合の差を計算するとこうなります。

▼ 0.36%のズレを金額に直すと(イメージ図)
1回に投じる金額 1日ズレたときの差
月3万円の積立1回分 108円
月10万円の積立1回分 約360円
一括100万円 約3,600円

積立の1回分なら、コンビニのコーヒー1杯分くらいの差です。しかもこのズレは有利な方向にも不利な方向にも同じように出ます。翌日が上がれば損した気分になり、下がれば得した気分になるだけで、どちらに転ぶかは事前に分かりません。

狙ってズラすことも、ズレを避けることもできない。

これが、次の既定解の根拠です。

迷いどころの既定解

既定解:積立をしている人は、1日のズレを気にしなくていい

  • 理由1:金額が小さい。月3万円の積立なら1回あたり100円前後の差(上の計算)。この差を気にして注文をためらうほうが、機会の損失は大きくなりやすい
  • 理由2:方向が読めない。ブラインド方式なので、当日の基準価額は誰にも分からない。「有利な日を選ぶ」手段そのものが存在しない
  • 理由3:積立なら自動で分散される。毎月・毎日と買い続けていれば、1日ズレて高くなる回と安くなる回が混ざる

ただし、次の人は日付を逆算してください。①まとまった金額を一度に動かす人(ズレの絶対額が大きくなる)②売却したお金を数日以内に使う予定がある人(受渡日まで使えません)③年末に、その年のNISA枠を使い切りたい人(日付が後ろにズレる仕組みがあるぶん、締切ぎりぎりの注文は翌年扱いになることがあります。毎年12月に各社が公表する「年内最終営業日」の案内を必ず確認してください)

よくある3つの勘違い

ここを間違えると、判断がぶれます

  • 「暴落した日に注文すれば底値で買える」→ 買えません。適用されるのは翌営業日の基準価額です
  • 「注文したのに反映されないのは不具合」→ 約定は翌営業日、その表示はさらに後になります。数日は様子を見てください
  • 「売ればすぐ現金になる」→ 受渡日まで数営業日かかります。急な出費の当てにはできません

積立の場合も仕組みは同じです。自分で注文ボタンを押す代わりに、設定した買付日に自動で注文が出るだけなので、適用されるのはやはり「その翌営業日」の基準価額になります。だから、買付日を1日ずらして有利にしようという発想は成り立ちません。この考え方は積立は「毎日」と「毎月」どっちがいい?とも地続きです。

まとめ

この記事のまとめ

  • 投資信託の値段(基準価額)は1日に1つ。注文の締切後に計算される(ブラインド方式)
  • 海外資産の投資信託は、時差の関係で申込日の翌営業日の基準価額で約定する
  • お金が実際に動く受渡日は、さらに数営業日あと(例のファンドは5営業日目)
  • 1日のズレは、月3万円の積立なら100円前後。しかも有利・不利どちらにも出る
  • だから積立勢の既定解は「気にしない」。逆算が必要なのは一括投資・売却予定・年末の枠使い切りのとき

「安い日に買えたかどうか」は、自分では選べない部分です。選べるのは、いくらを、どのくらいの期間、続けるか。未来の値動きは誰にも分かりませんが、自分で決められる場所に集中するほうが、結果としてラクに続けられると私は考えています。

※この記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。